プレイヤーと共に「ディアブロ IV」を良くしていきたい
「ディアブロ IV」は無数のモンスターを倒して装備を手に入れ,さらなる強さを目指していくアクションRPG。ハックアンドスラッシュ(ハクスラ,トレハン)ジャンルの代名詞とも言える「ディアブロ」シリーズの最新作である。これまでにも何度かβテストが行われており,その記事を読んだ人も多いだろう。
今回の合同インタビューは5月26日に行われた。前回も日本メディアの質問に答えてくれたロッド・ファーガソン(Rod Fergusson)氏に加え,アソシエイトゲームディレクターを務めるジョセフ・ピエピオラ(Joseph Piepiora)氏も登場。両氏に発売直前の心境から聞いてみた。
――さっそくですが発売が間近に迫った現在の心境を聞かせてください。そして1997年に「ディアブロ」が発売されてから,世に出ている多数のハックアンドスラッシュと比べて,「ディアブロ IV」が優れている点を教えてください。
ジョセフ・ピエピオラ氏(以下,ピエピオラ氏):
長い歴史を持つ「ディアブロ」シリーズから,それぞれの作品の良いところを採り入れることができました。
初代「ディアブロ」からは,ダークファンタジーらしさとダンジョンへ潜っていく,閉所恐怖症を起こしかねないようなゲームプレイ,そして「ディアブロ II」のビルドシステムや,アイテムを探し出して自分を強くするコアなゲームプレイを強化しました。また,「ディアブロ III」におけるアクションとコンバットの気持ち良さといった要素も「ディアブロ IV」にはあります。
そうした意味では,過去作品の集大成であると同時に,プレイヤーが自由に遊べるように作ってもいます。
ロッド・ファーガソン氏(以下,ファーガソン氏):
「ディアブロ IV」をもうじきリリースできるということで,眠れないくらい興奮していますね。私にとって「ディアブロ IV」は,これまでのゲーム開発の中でもまれなケースだと思います。なぜなら,自分が好きだったシリーズに,開発者として関われたわけですから。楽しみながら開発を進めることができました。それだけにプレイヤーが楽しんでいるところを早く見たいです。
――初代「ディアブロ」から25年が経ちます。業界自体の変化や開発に対するスタンスなど,これまでのシリーズと違っているところはありますか。
ファーガソン氏:
初代「ディアブロ」は悪魔が出てくるダークなゲームで,親にプレイしていることを隠すレベルでした。あれから25年が経ち,「ウォーキング・デッド」「ゲーム・オブ・スローンズ」の例を見ても分かるように,ダークなトーンのものが受け入れられていると感じます。「ディアブロ IV」もシリーズの根底にあるダークなところに戻って,作品を送り出せるんじゃないかということですね。
ピエピオラ氏:
「ディアブロ IV」はストーリーにも注力しており,苦しみながら開発を進めていきました。初代「ディアブロ」から追求されてきた,天界対地獄という図式を大々的にフィーチャーし,この戦いにプレイヤーが巻き込まれながらストーリーを楽しむという部分にフォーカスしています。
これまでに名前だけが出てきたリリスとイナリウスが登場し,2人がなぜこういったことをしたのかという個人の視点からもストーリーが展開するので,こちらも見どころですね。「ディアブロ IV」のダークで美しい世界に注目してください。
ファーガソン氏:
業界的な変化としては,ゲームがライブサービスに近づいているところが大きいでしょう。25年前と言えば,少人数のチームがゲームを開発し,発売されたらやれることがなくなって,みんなで旅行に行ったものです。一方,現在は発売がスタートラインというところがあります。Day1パッチを開発し,次のアップデートについて考え,DLCを作る……といった感じで,常に動き続けていないといけません。チームの規模も大きくなっていますから,どう回していくかも考える必要があるんです。
――今回はオープンワールドになっていて,レベルが違うプレイヤー同士もパーティを組めます。その際,それぞれのプレイヤーにとってモンスターの強さはどのように映るのでしょうか。
ピエピオラ氏:
モンスターのレベルはそれぞれのプレイヤーに対して“スケーリング”が行われるため,プレイヤーは「同じようなレベルの仲間と組んで戦っている」という感覚を味わえます。普通,仲間のプレイヤーのレベルが高かったら,自分が何もしないうちにモンスターを一瞬で倒してしまったりするものですが,そうした事態は避けたかったんですね。
レベル10のプレイヤーとレベル50のプレイヤーがパーティを組み,モンスターと遭遇したとしましょう。レベル50のプレイヤーにはそのモンスターがレベル50に見え,レベル10のプレイヤーにはレベル10として見えます。プレイヤーたちが同時にダメージを与えると,モンスターのHPはレベル相応の割合で減っていくんです。
例えば,レベル10のプレイヤーがファイヤーボールを使ったとします。与えるダメージの数値はレベル10相当のもので,モンスターのHPは25%削られます。レベル50のプレイヤーもファイヤーボールを使ったら,30%のHPが削られます(※実際のダメージ数値としては,レベル50のファイヤーボールはレベル10のものよりも大きなダメージを与えるため,普通ならモンスターは倒される。しかし,実際にはレベルが違っても与えるダメージは割合として扱われているため,モンスターが一発で倒されるようなことにはならない)。
「ディアブロ」シリーズは1人でプレイすることにフォーカスしてきました。しかし,「ディアブロ IV」ではオープンワールドかつマルチプレイにしたため,フィールドで他のプレイヤーに出会ったとき,邪魔に思えないことが大事です。そこで,こうしたシステムを取り入れ,他のプレイヤーに出会うことが嬉しく思えるようにしました。
ファーガソン氏:
我々はマルチプレイも楽しんでほしいと考えています。従来のゲームはお互いのレベルが違うと,一緒にプレイしにくかったのですが,「ディアブロ IV」でこうした事態は起こりません。クロスプログレッションやクロスプレイもサポートしており,すべてのプレイヤーといつでも一緒にプレイできます。このためにスケーリングを導入したんです。
また,通常のオープンワールドゲームは一度レベルを上げると,低レベルのフィールドに戻る意味が無くなりますが,これも避けたいと考えていました。どのレベルでも,どこでも,しっかり楽しめるようにしたかったんです。
ただ,「ディアブロ IV」の世界のすべてにスケーリングが適用されるわけではありません。例えば,ワールドティア(難度)を上げるためには,「キャップストーンダンジョン」をクリアしなければいけません。これはワールドティアを上げるための試練であるため,スケーリングが行われず,一定レベルのモンスターが出現するというわけです。
――自分はハックアンドスラッシュをプレイしたことがなかったんですが,先行プレイにおいて難しさや分かりづらさを感じるようなことはありませんでした。本作からシリーズをプレイする人に向けて,配慮した点を教えてください。
ピエピオラ氏:
アリガトウゴザイマス(日本語)! これこそ,我々が求めていた反応です。どんなジャンルを経験した人でもスムーズにプレイできるような基盤を作るべく,開発の初期からマウス&キーボードとコントローラでのゲームプレイを考えてきました。
また,ハックアンドスラッシュ初心者でもすんなり理解できることを目指してきました。ゲーム全体を通じてプレイヤーにどんどん情報を与え,新しい学びをしてもらうということですね。
例えばソーサラーの場合,最初はファイヤーボールなどのシンプルなスキルで冒険を進めていきます。そして,レベルが上がると新しい可能性や発展が開放されるわけです。ただ,これをやり過ぎるとディアブロシリーズに慣れた人が物足りなく感じるようになります。
そのため,ハックアンドスラッシュ初心者とシリーズ経験者のどちらも楽しめるものを目指してきました。プロローグの部分にはほぼ自由度がないのですが,これが終わると世界が広がってやれることも多くなります。こうした質問をいただけること自体,我々が目指した終着点だったんです。
ファーガソン氏:
ナンバリングの4作目なので「これまでプレイしていないから,もういいや」と思われるかもしれません。しかし,前作で物語にしっかり区切りを付けたうえでの「ディアブロ IV」であり,その後の世界がどうなっているのかをしっかり教えながらストーリーが展開していくので,未経験者も100%楽しんでいただけます。
それでいて,「ディアブロ IV」の世界はまったく新しいものではありません。これまでのシリーズをプレイされた人も楽しめます。例えば,メインキャラクターの1人である「ロラス」は「III」に登場していますから,昔からプレイしている人はピンと来るでしょう。
開発チームは「学ぶこと自体はすごく簡単,マスターするのはすごく難しい」ゲームにしようと言ってきました。例えばゲームの導線にしても,最初の時点からかなり計算したものになっています。従来のオープンワールドであれば,スタート直後から「自由にしてください」というものですが,それでは新規プレイヤーは何をしていいか分からなくなってしまう。そのため,レベル1から5まではほぼ計算済みの作りです。
最初の街に到達した時点でキャラクターのレベルは2になるかならないかというくらいで,プレイヤーができることも制限されています。次に何を覚えてもらうかも計算して,ゲームの仕組みに慣れてもらうための作りにしているということですね。そこからはプレイヤー自身がどんどん強くなりながら,世界を楽しんでもらえるようになっています。
少し話が本筋から外れるかもしれませんが,本作は障害のある人のために字幕をはじめアクセシビリティ機能機能を搭載しています。その意味でも幅広いプレイヤーに楽しんでもらえると思います。
――これまでに複数のβテストを実施してきましたが,各国・地域によって特徴的な傾向はありましたか。
ピエピオラ氏:
βテストではさまざまなフィードバックをいただきましたが,日本からはローカライズに関する声がありましたね。説明が不足していたり,分かりづらかったりするところがあったようで,我々は学びとして受け取っています。「ディアブロ IV」は17言語をサポートしていますが,すべての言語に同じ質のローカライズができているとは思っていません。しかし,本作はライブサービスですから,徐々にアップデートで良いものにしていけるでしょう。
ビルドに関するフィードバックも多くありましたが,βテストの時点では最終的なものではありませんので,こちらもリリース後に意見をいただいて良いものへ調整していきます。いろいろな意味で,プレイヤーと我々は一緒に「ディアブロ IV」を良くしていけると思っています。
また,「難しく感じられた」というフィードバックもいただいています。とくにサーバースラムのときに多かったのですが,レベル上限が20に制限されていたことが主な理由であると思っています。実際,レベル20は各クラスの特殊なシステムが入っていない状態です。これらのシステムが入ってくると,バーバリアンには武器の能力がアップする熟練度,ネクロマンサーにはさまざまなミニオンを召喚する死者の書といった要素がどんどん開放されます。これにより,そのクラスの本当の姿が現れると考えて下さい。レベル20を超えてから,がらりと変わったプレイができるようになりますからね。
――「ディアブロIV」にはシリーズ初のオープンワールドが導入されます。これにより,シリーズがもともと持っていた魅力が失われるという心配はありませんでしたか。
一方,オープンワールドの導入により,シリーズの魅力がさらに引き立てられるところはありますか。
ピエピオラ氏:
これまでのシリーズでは,とてもリニア(一本道)な展開になっていましたが,プレイヤーはこれを当たり前だと考えているでしょう。一方,「ディアブロ IV」はプレイヤーにさまざまな選択肢を与えることが中心になっているものの,これをやりすぎるとプレイヤーは違和感を覚えることになるため,かなり注意しながら作ってきました。
「ディアブロ」の根本にあるのは,どんどんモンスターを倒して,強力なアイテムを手に入れて強くなっていくという遊びです。こうした部分をオープンワールドでしっかり楽しませることが,大事な点だったと思います。
従来のプレイヤーは効率化を重視しすぎて,あまり楽しいゲームプレイができていなかった面があったと思います。ですので,「いかに早くモンスターを倒してアイテムを掘るか」という部分を,ナチュラルな形でゲームプレイに盛り込みたいと考えていました。
本作でも複数のキャラクターを作ることになりますが,同じことは繰り返させたくない。例えば,世界各地には「リリスの祭壇」が隠されており,初めて見つけたときの嬉しさは大切です。しかし,別のキャラクターでゲームを始めたときに,同じようにリリスの祭壇を探さなければならないかというとそれは違う。
「一度発見したリリスの祭壇は,他のキャラクターでも開放されている」ようにしています。我々はゲームデザインによって効率化の側面を緩和し,プレイヤーにはオープンワールドを楽しむことに時間を使ってもらいます。
――サーバースラムの際にワールドボス「アシャバ」と戦いましたが,他のモンスターとは桁違いの強さでした。正式リリース後,少人数のプレイヤーしか集まらないことも考えられますが,そうした場合でも勝てるのでしょうか。
ピエピオラ氏:
プレイヤー1人でもアシャバに勝つことはできますが,限りなく難しいですね。サーバースラムでは,アシャバのレベルが25,プレイヤーのレベル上限が20という調整になっていました。これは「強いアシャバと戦ってほしい」という意図によるもので,実際にはここまで困難な事態にはならないと思います。ただ,この状態でも1人でアシャバに立ち向かい,勝利したプレイヤーは存在します。
リリース後,アシャバのレベルはさらに高くなりますが,プレイヤーも低レベルで挑むことはまずないでしょう。先ほどお話しした各クラスの特殊なシステムが開放され,アイテムをもっと手に入れ,準備の整った状態で戦うことになりますからね。
マッチメイキングに関しても,少人数しか集まらないのはサーバースラムやオープンβテストにおけるまれな状態だと思います。リリース後はプレイヤー数も桁違いに増えますから,こうした状態はほぼ考えられないでしょう。
ファーガソン氏:
私がプレイしたときには,アシャバに勝つために6回もチャレンジしたり,ほぼ1日中,戦い続けていたりするようなこともありました。8人パーティで挑みましたが,けっこう難しいですよ。このように「いつチャレンジしてもしっかり手応えがある」のが,我々の考えるアシャバとの戦いです。
しっかりとビルドやアイテムを考え,ダンジョンに潜ってキャラクターを強くしてから挑戦するのがワールドボスです。サーバースラムではこうした部分が見られたので良かったですね。
――最後に日本のプレイヤーにメッセージをお願いします。
ピエピオラ氏:
日本でのローンチが楽しみです。「ディアブロ」のフォーマットは,日本のプレイヤーにはまだ馴染みの薄いスタイルだろうと思いますが,ゲームの面白さには絶対的な自信がありますので,皆さんの反応が楽しみです。ぜひ手に取ってみてください。
ファーガソン氏:
ナンバリングの4番目ですが,ここから始めやすい作りになっていますので,怖がらずに試してほしいですね。日本のRPGファンが,「ディアブロ」という長い歴史を持つダークファンタジーRPGをどのように受け止めてくれるのか,とても楽しみです。
からの記事と詳細 ( [インタビュー]「ディアブロ IV」開発陣インタビュー。オープンワールドを導入するハックアンドスラッシュの金字塔は,誰もが楽しめるものに - 4Gamer.net )
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