2024.01.31
あの人気シリーズが本になった!
「冷やすメカニズム」を根底から覆す冷蔵庫、意外な魚のおかげで完成した高温でも触れるレンガなど、なぜできたの? どうやって働くの? と、思わず頭をかしげてしまうようなびっくり発明の数々をご紹介してきた、本サイト人気連載「さがせおもしろ研究! ブルーバックス探検隊が行く」。
なんと、1世紀半近くにもわたって日本の産業を支えてきた「産業技術総合研究所」の全面協力のもと、この度、『あっぱれ! 日本の新発明 世界を変えるイノベーション』として刊行されました! それを記念して、厳選おもしろ発明をご紹介します。
お伝えしている、人型“ガテン系”ロボットの「道具を使って、正確に作業する」凄技に続いて、「見えないのに、すんなりと移動できる謎」その秘密を、開発者の坂口さんに直撃します!
*本記事は、『「あっぱれ! 日本の新発明 世界を変えるイノベーション』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
前が見えないのに、目指す所へ移動している!
工具を使って、ビスをまっすぐ打ち込むなど、繊細な働きをするロボット「5P」。じつは、さらに、注目すべきことがある。
5Pは、自分の掲げた石膏ボードで視界を遮られた状態のまま、壁際へと移動しているのだ(図「前が見えなくてもめざす場所に移動できる5P」)。
5Pは作業の前に、あらかじめ周囲の環境をレーザー測定し、3次元マップを作成している。そして動作中はつねに、自身がそのマップ上のどこにいるかを把握している。
だから前方が見えなくても、目的の場所へと移動できるという。
これは、人間が作業する場所に到着したら、まずあたりを見回して、だいたいどこに何があるかを把握しておくのと一緒だ。人間だって前が見えなければ、そのときの記憶を頼りにして、石膏ボードを壁まで運ぶだろう。
“顔”に搭載されたホットな技術
「ここで使っているのは、『SLAM』(スラム:Simultaneous Localization and Mapping)といって、自己位置同定と地図づくりを同時におこなうホットな技術なんですよ(図「新技術「SLAM」のデモ」)。環境の測定はレーザーレンジファインダーでおこなっています」
そう言って阪口さんが指さした、例の“顔”のところで回転しつづけている円筒形の装置こそがレーザーレンジファインダーだ(図「レーザーレンジファインダー」)。
それはレーザー光を使った距離計で、5Pに搭載されているものは、円筒形の周囲270度の平面を1本のレーザー光でスキャンして、検出物までの距離を測定できる。装置そのものを回転させることで、立体的に周囲の環境を把握できるというわけだ。
データはたえず更新されていて、作業中に障害物が足下に転がってきても対処できるという。
「ただし、もし認識できていないものにぶつかったら、その場合は転倒してしまうでしょう。じつは、5P開発中に僕の家では双子の娘が生まれて、もう歩きはじめたのですが、赤ん坊の彼女たちを見ていると、歩いていて障害物に当たっても、それが動かせるものならグイグイ押していくんですね。障害物から受ける抵抗を感知して、転ばずに進むことができる。人間はよくできているなと思いました」
「5Pにそれをやらせようとしたら、まずトルクセンサーを搭載しないといけない。そうすると、そのぶんの重量が増えるし、バッテリー消費も早くなってしまいます」
5Pの頭部にはこのほかにカメラと、額のあたりには「Astra(アストラ)」というセン サーが搭載されている。テレビゲームにはコントローラを使わずにジェスチャーで操作するタイプのものがあるが、その場合にジェスチャー認識に使われているのがこのセンサーだ。
「人間ならどれも眼に相当するセンサーですが、5Pではセンサーを視覚認識系と距離認識系で使い分けているんです。センサーはほかには、自分の姿勢を検出するジャイロセンサー、手首と足首にフォースセンサー、そして手のひらに小さなカメラがついているくらい。少ないでしょう? 必要性とバッテリー消費やコストを総合的に判断して、センサーの数を絞り込んでいるんです」
阪口さんの話はここから裏話へと移っていった。
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