【まとめ】
・先週金曜日夜、G7首脳テレビ会議が開かれた。 ・首脳声明、中国について踏み込んだ言及無し。 ・日本政府は「中国側の具体的な行動を求めていくとの基本的な考え方を説明」と発表。
先週金曜日夜、今年の議長国英国の呼びかけでG7首脳テレビ会議が開かれた。昨年は新型コロナ感染の影響でG7首脳の対面会合がなく、3月と4月の2回、今回と同様のテレビ会議が行われただけだった。それにしても、トランプ氏のいないG7が如何に「本来あるべきG7」となったことか。それだけでもホッとする毎日である。 トランプ氏の最大の問題は外交、特に国際会議と選挙キャンペーンの区別がつかなかったことだ。毎年9月の国連総会では米国内の「岩盤」支持者向けとしか思えない演説を繰り返し国際社会の失笑を買った。昨年も大統領選挙のイベントの一つとしてG7サミットを取り扱おうとした。メルケル独首相がこれに反発したのも当然だろう。 それはともかく、今回も首脳声明が発表された。A4で二枚の英文という簡単なものだ。趣味の問題かもしれないが、文章的にはあまり美しくない。恐らくはテレビ会議だったため、関係国間で十分な意思疎通ができなかったか、準備のための時間が短かったのだろう。それでも多くの人々が徹夜で作ったはずだ。誠にお疲れ様である。 その首脳声明は、中国につき「全ての人々にとり公正互恵的な世界経済システムを支持するために、他の諸国、特に中国のような大きな経済を含むG20諸国を関与していく。G7の首脳として、非市場志向の政策や慣行に対処するための共同のアプローチについて協議し、全ての国に影響を与える重要な世界的な課題に取り組むため、他国と協力していく。」としか述べていないため、国内では批判的な声が少なくない。 だからだろうか、今回の政府発表では、「中国との関係について主張すべきは主張し、中国側の具体的な行動を求めていくとの日本の基本的な考え方を説明しました。また、東シナ海、南シナ海での一方的な現状変更の試みについての我が国の懸念についてもしっかりと伝えました。」とわざわざ言及している。実に興味深い。 今週の毎日新聞政治プレミアでは、この種の首脳宣言、首脳声明の作り方について書いた。先日の日米首脳電話会談は、事後の政府発表で「中国」に言及しなかったことが厳しく批判された。米側の発表ではしっかり「中国」に言及しているのに、である。でも、それってあまり意味のある批判ではない、と思うのだが・・・。 もう一つ、外交安保とは直接関係はないが、大いに気になったのが新型コロナワクチンの接種開始だ。筆者もあと二年で古希、ワクチンの優先接種も可能な年齢だが、実は今そのワクチン接種に複雑な思いを抱くようになった。ワクチン接種の「高齢者優先」は果たして最善の策なのだろうか。最後に、ある人生の先輩から頂いたメールを以下ご紹介する。親愛なる読者の皆さんはどう思われるだろうか? 「私は80歳を超える高齢者だが、接種はずっと後で良い。医療従事者、子供のいるお母さんは早く。次は学生、若者へ。対面授業を行い、その後は食事やパーテイも。次は電車出勤の仕事従事者。そうすればみんなが帰りは一杯、夜食でお店に貢献。時間制限もしなくてOK。高齢者はあまり外に出ない、あるいは、もう少し我慢して貰う。そんなに数は無い筈。仮に感染して治っても、どうせ後数年の命。感染した若い人が死亡するのは少ないとしても、そうなれば10-50年を失う。若者、仕事者優先を!」 〇アジア ミャンマーの混乱が続いている。先週は3人の死者が出た。22日には全土でゼネストが行われる。恐らくこの混乱を軍部は「想定内」と見ているだろう。彼らも伊達や酔狂でクーデターを決行した訳ではあるまい。隣のタイでも状況は似てきた。相互に暴力の連鎖が起きないことを祈るしかない。 〇欧州・ロシア 米テネシー州に住む95歳のドイツ国籍男性がドイツに移送された。米国にはナチス迫害に関与した人物の居住を禁止する法律があるそうだ。これを厳し過ぎると見るべきか、法律は法律と見るべきか。日本では意見が分かれるだろうが、欧米社会でホロコーストが如何に機微な問題であるかが良く分かる事件である。 〇中東 イラン訪問中の国際原子力機関(IAEA)事務局長が、イランと核関連施設の必要な査察を最大3カ月間続けることで合意したと発表した。これは近い将来米イラン対話に繋がる第一歩なのか、それとも決裂の前のエピソードなのか。イランのローハニ大統領は本気だろうが、ハメネイ最高指導者はそうではない気がする。 〇南北アメリカ 先週テキサス州を寒波が襲い、州全土で大停電が起きた。その最中に、同州選出上院議員で2016年共和党大統領候補の一人だったTグルーズ氏が、家族とともにメキシコのリゾート・カンクンに避難していたことが分かり、大炎上している。馬鹿な奴だな、これでクルーズも終わりだろう。共和党にはこの程度の人材しかいないのか? 〇インド亜大陸 インドが中国からの投資案件を承認する可能性が高まったという。昨年の国境紛争地を受け中国からの投資に対する規制が強化され、投資案件は事実上棚上げされていたが、その一部が承認されるそうだ。単なるエピソードか、それとも背に腹は代えられないのか。 今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは来週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
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