このたび発表された最新のシミュレーション研究では、トンボー領域(Tombaugh Regio)のスプートニク平原(Sputnik Planitia)と呼ばれるこの地域が、直径640km超の惑星状天体との大規模な衝突の結果として形成されたことが示唆されている。この天体の大きさは、米アリゾナ州の北から南までの距離に相当するという。
冥王星は1930年、アリゾナ州フラッグスタッフのローウェル天文台に勤務していた米天文学者クライド・トンボーが発見した。
氷の殻
スプートニク平原は、冥王星の赤道近くの縦2000km横1200kmの範囲に広がる白色の盆地で、ニュー・ホライズンズのフライバイ探査で発見された。冥王星全体を覆う氷の殻が、同平原では特に薄くなっており、ここには冥王星の極寒環境から隔絶された地下海があると、科学者らは考えていた。だが、専門誌Nature Astronomyに15日付で掲載された、今回の最新研究をまとめた論文では、冥王星には地下海が存在しないことも示唆されている。
表面の大部分
論文の筆頭執筆者で、スイス・ベルン大学の研究員のハリー・バランタインは、冥王星の表面の大部分が水氷の殻を覆うメタンの氷とその誘導体で構成されている一方、「スプートニク平原の大部分は窒素の氷で満たされており、これは低地であるため、天体衝突後に速やかに堆積した可能性が最も高い」と説明している。冥王星の核
「冥王星の核はとても低温なので、天体衝突で加熱されても核の岩石は融解せず、非常に硬いままだった」と、バランタインは続ける。「衝突の角度と低速度のおかげで、衝突天体の核は、冥王星の核の中に沈み込むのではなく、核の上で原形を保ったまま偏平化した」スプートニク平原の形状と、同平原が赤道上に位置することは、他の惑星状天体との正面衝突でなく斜め衝突と、地下海でなく衝突天体の核の偏平化によって説明できると考えられる。
重要な手段
論文の共同執筆者で、米アリゾナ大学月惑星研究所(LPL)の惑星科学者のアディーン・デントンは「スプートニク平原の形成は、冥王星の歴史の最初期について知るための極めて重要な手段を提供している」と述べている。「より特異な形成シナリオを含めるように研究を拡張することで、冥王星の進化の全く新しい可能性のいくつかを知ることができた。これは他のカイパーベルト天体にも適用できるかもしれない」カイパーベルト
カイパーベルトは、海王星の軌道以遠の太陽系外縁部をドーナツ状に取り巻く領域で、氷天体や彗星が存在すると考えられている。冥王星は、太陽から地球までの距離の40倍も遠くにあり、太陽光が到達するのに約5時間半かかる。地球の1600分の1しか太陽光が届かないため、表面温度が氷点下240度まで下がることもある。
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