NASAのジェット推進研究所で宇宙構造研究グループに所属する研究者であるスラヴァ・G・トゥリシェフ氏が、数光年先まで電力を伝達する「星間電力伝達のための重力レンズ」という論文をオンラインで公開しました。トゥリシェフ氏によると、論文で示した理論の包括的な分析はまだ行われていないものの、現在の科学レベルから考えて実現可能な理論と考えられるそうです。
(PDFファイル)Gravitational lensing for interstellar power transmission
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Civilizations Could Use Gravitational Lenses to Transmit Power From Star to Star - Universe Today
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恒星や銀河などが発する光は、進行上にある天体の重力場の影響でゆがめられた時空を通過する際に、アルバート・アインシュタインの一般相対性理論に従って曲がります。この際に光は光学レンズを通過する際と同じような曲がり方をするため、届いた像が弓状にゆがんで見えたり、より遠くの小さい像を拡大して見ることができたりと、光学レンズと同じような効果を発揮します。これが「重力レンズ効果」と呼ばれており、過去には周囲に天体がないため観測が難しい「はぐれブラックホール」を5150光年先で観測できたり、27億光年離れた銀河のブラックホールを発見できたりといった研究成果が示されています。
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一部の研究者は、太陽を太陽重力レンズ(SGL)として利用する事で、天文学や地球外生命体の探索に応用する研究を進めており、過去には重力レンズで無線信号を拡大して「星間ネットワーク」を構築する論文も発表されています。トゥリシェフ氏は2023年11月に発表した論文で、恒星の重力レンズを使用して星から星へ電力を伝達する理論を提起しています。論文はオンラインで公開されており、アメリカ物理学会が発行する科学学術雑誌である「フィジカル・レビュー」への掲載に向けて審査が行われています。
論文では、星の重力焦点を利用してエネルギーを集中させることで、他の星系にビームを照射する形で電力を送信する方法が検討されています。トゥリシェフ氏によると、惑星間通信に使用されるのと同じ装置を、伝達するビームの規模に合わせて構築することで、一対の恒星重力レンズが星間距離において光の像だけではなくエネルギーを伝達できる可能性があるとのこと。
研究では、SGLに関する以前の研究で得た分析ツールを使用して、伝達される光やエネルギーがどのように増幅されるかを検討しています。宇宙や天文学のトピックを掲載するUniverse Todayに対し、トゥリシェフ氏は「動力伝達を研究するための分析ツールが開発されていなかったため、私はSGLの伝達能力に関するテーマを長い間避けてきました。現在では、多くの関連性のある重要なトピックについて研究が進んでおり、この研究につながっています」とメールで語っています。
研究ではまず、SGLに関する以前の研究で得た分析ツールによって、重力レンズのシステムで光がどのように増幅されて伝達されるかを再検討しました。次に、それらと同じ方法を、自由空間に配置したレーザー出力装置に応用するシナリオを構築し、重力レンズの理論を適用しています。結論として、重力レンズの焦点領域に配置されたレーザー出力装置は、受信機が数光年先から受信したパワーを増幅することが可能となり、SGLを使用してビームで電力を供給すれば、通信および電力供給を行えると結論付けられています。
重力レンズを用いて通信および電力の供給が数光年先まで行えるとすると、星間探査を長期にわたって実施できるほか、テラフォーミングに十分なエネルギーを確保することができます。トゥリシェフ氏は「私たちは実現可能性を示したのみですが、これは関連する物理学のみに焦点を当て、非推測的な方法ですべてのトピックを扱った最初の論文となります。ただし、送信機や1対のレンズ、受信機の位置によるズレ、レンズの内部構造を特徴付けるモーメントの存在など、さらに多くのトピックについて検討していく必要があります。しかし、それらに対処することさえできれば、十分実現可能な理論だと言えます」と語っています。からの記事と詳細 ( 重力レンズを使って「星から星へ電力を伝達」する理論が研究で示される - ライブドアニュース - livedoor )
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