ある国際的な研究グループが、天の川銀河の中心で規則正しく回転する古い星々を発見しました。
Pristine Inner Galaxy Survey(PIGS)というチームによる研究成果は、銀河系の中心近くを周回している非常に古い金属欠乏星の現時点で最も大規模かつ詳細な観測となります。
宇宙初期からの遺物
この研究は、先日カーディフ大学で開催された英国王立天文学会のNational Astronomy Meeting 2023で発表されました。
天の川銀河の最初期に形成された、かつてはほぼ手の届かなかった恒星を見ているのだと考えるとワクワクします。これらの星々はビッグバンから10億年以内に形成された可能性が高いので、宇宙初期からの遺物だといえます。
と、ケンブリッジ大学の天文学者で研究の共著者Anke Arentsen氏は、王立天文学会のリリースにてコメント。
最古の星々はほとんどが水素とヘリウムといった軽元素で構成されています。それらは重い元素が太陽のような恒星に取り込まれる前に形成されたもの。宇宙の最初期の星が生まれたのは、ビッグバンから数億年後のことでした。
星間塵が研究の妨げに
これまでに観測された最も古い恒星は、2022年に発見された約130億光年遠方の「エアレンデル」です。エアレンデルを観測できたのは、遥か彼方の銀河にある光を質量の大きな天体の重力場が拡大する重力レンズという時空のゆがみのおかげでした。
天の川銀河のかなり初期の星々は銀河中心の近くに隠れていると考えられてきましたが、私たちの視線上に存在するおびただしい量の星間塵がその研究の妨げとなっていました。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような観測機器が赤外線波長で撮影するのも星間塵が理由で、赤外線は塵を透過するのでそれらに包まれた太古の天体を観測できるのです。
このプロジェクトでPIGSは、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡に特殊なイメージングフィルターを使って候補となる星を選定。それらはアングロ・オーストラリアン望遠鏡を使った分光観測で確認されました。
PIGSは以前、こういった金属欠乏星から銀河のピーナッツ型バルジの金属量を割り出したこともあります。
銀河の進化過程解明の一助に
今回の研究では、古い星ほど無秩序に動くものの、それらでさえ銀河中心の周りの回転を保っていたことが判明。星が一生のほとんどを過ごす銀河中心は、太陽のおよそ400万倍の質量をもつ天体超大質量ブラックホール「いて座A*」も存在するエリアです。
このような古代の星の挙動を理解すれば、私たちの銀河や似ている銀河の進化過程の解明に役立つでしょう。
Source: nam2023.org, Phys.org, Oxford Academic,
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