10月18日の記者会見に登壇した、吉田鋼太郎さん(左)、玉木宏さん(真ん中)、八木莉可子さん。
ファミマから「お母さん食堂」がなくなる ── 。
10月18日、ファミリーマートはプライベートブランド(PB)を一新すると発表した。
加工食品、お菓子、飲料などの「ファミリーマートコレクション」、惣菜の「お母さん食堂」、そして「お母さん食堂プレミアム」の3シリーズが一本化され、新たに「ファミマル」と改名、味やパッケージも刷新する。
お母さん食堂は「ジェンダーバイアスを助長するのでは」との批判も集めていた。リニューアルはどのような経緯で決まったのか、同社ファミマルブランドマネジャーの柘植幹子さんに聞いた。
「お母さん食堂」名前だけが走ってた
ファミマルブランドマネジャーの柘植幹子さん。
撮影:西山里緒
2020年末に女子高生らによって立ち上げられた「ファミリーマートの『お母さん食堂』の名前を変えたい!!!」との署名活動は話題を呼び、結果的に7561人の賛同者が集まった。
立ち上げた女子高生は、「お母さんが食事をつくるのが当たり前」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を助長しかねない、とBusiness Insider Japanの取材で語っていた。
「(SNSでの騒動のことは)もちろん認識していましたが、ジェンダーについて話題になったから(名前を変えた)というわけではありません」
署名活動と名称変更の関係性について切り出すと、柘植さんはそう否定する。
ファミマがPBリニューアルのために本格的に動き出したのは2020年の春頃から。当初からお母さん食堂はなくなる方向で話が動いていたという。
そもそもお母さん食堂が始まったのは2017年だ。当時、需要が高まっていた惣菜シリーズを「ファミコレ」から独立させ、アピールしたい狙いがあったという。
一方で、思わぬ誤算もあった。
「お母さん食堂は名前だけが走ってしまっていて、調査をした時に『お母さん食堂=ファミマ』というイメージが浸透していなかった。PBを強化しようという時に、これを残すのはしんどいよね、と」
さらに、人気に伴って「タイで作ったグリーンカレー」「シュクメルリ」などメニューが拡大したことで「お母さん食堂というネーミングと商品ラインナップのアンマッチも目立ってきた」(柘植さん)。
お母さん食堂のラインナップには、シュクメルリ、台湾ルーローハン、ぼっかけなども。
撮影:西山里緒
柘植さんは、SNSで起こった批判についてこう振り返った。
「今回はこういったコンセプトにしましたが、これからも私たちの考えが及ばなかったようなご意見が出てくる可能性もゼロではない。その時には真摯にお客様の声として受けとめて、変化を恐れず、商品を出していきたい」
ファミマ「あらゆる“家族”に喜んでもらう」
「真俯瞰」のパッケージデザインに新しくなった「ファミマル」。
撮影:西山里緒
一方で、新PBのコンセプトを考える上で、どう「家族」を再定義するか、は議論を重ねたという。
「弊社はそもそもコーポレート名に“家族(ファミリー)”と入っていることもあります。ある特定の暮らし方を“家族”に包含しないようなものは避けるべきでは、ということは、当然議論しました」(柘植さん)
ジェンダーや国籍、年齢など「家族のあり方」が今まで以上に多様になる中で、あらゆる家族形態にある人が手に取れるように ── 。
リニューアルの一番のこだわりポイントは「家族に伝えたくなる」デザインだという。
例えば、初期ラインアップとして販売する「痺れて旨い!四川風麻婆豆腐」「バターの香り広がる!海老グラタン」「じゅわっと肉汁!!!鉄板焼ハンバーグ」にはそれぞれ「痺れ」「バター」「肉汁」と、その商品の“強み”がパッと一目でわかるワードが入っている。
「大切な家族に伝えられる」をコンセプトに商品をリニューアル(写真は「バターの香り広がる!海老グラタン」)。
撮影:西山里緒
また、外国籍の人など日本語がわからなくても商品が区別できるように、写真はSNSやレシピ動画サイトでよく見られるような「真俯瞰」のものを採用。人から人へと「伝えられる」シンプルなメッセージ性を意識した。
「商品は、最終的にお店でスタッフさんが並べて初めてお客様に届きます。売り場に並べやすい、陳列しやすい、という点にはこだわりました」(柘植さん)
わかりやすさについては、サステナブルへの取り組みについても明記を強化した。
商品につけられる28種類あるアイコンには、国産や糖質オフ、高タンパクなどに混じって「サステナブルカカオ使用」や「トレー無し包装」「エコ容器」などをアピールするものも。
「元々『ファミマecoビジョン』という取り組みはファミマ全体でやらせていただいています。PBにおいてもできるだけ、私たちの意思を(アイコンに)入れていく」(柘植さん)
「イメージ負け」のファミマ、逆襲なるか?
「真俯瞰」で撮影された商品パッケージデザインの「ファミマル」。
撮影:西山里緒
「負けていたのは、イメージでした」 。今回のPBリニューアルにおいては、ファミマの認知度の低さをあえて“自虐”するような広告も打ち出している。
グーグルトレンドで大手コンビニ3社の名称の過去5年の人気度を比較しても、同様の傾向が見てとれる。「ローソン」「セブンイレブン」に対し、「ファミリーマート」の人気度は低く、略称の「ファミマ」を足し合わせてもほぼ両社には届かない。
グーグルトレンドでコンビニ大手3社を比較した様子。
画像:グーグルトレンドより
その低い知名度とは裏腹に、実はファミマの売り上げは2021年に入ってからじわりと復調している。
ファミマが10月14日に発表した2021年3~8月期の連結決算によると、チェーン全店売上高は前年比4.7%増の1兆4268億円。創立40周年の販促企画の効果もあり、コロナ禍での売り上げの落ち込みから回復しつつある。
既存店の客数・客単価も共に約2%増えており、1日当たりの平均店舗売上高(日販)は50万7000円。ライバルのローソンに対し(同・49万7000円)差をつけた。
今こそライバルのローソンを抑え、再び勢いに載せるとき。PB刷新からは、そんなファミマの悲願の声が聞こえてくるようだ。
(取材・文、西山里緒)
からの記事と詳細 ( ファミマが「お母さん食堂」を消滅させた本当の理由…「変化恐れない」とブランド責任者 - Business Insider Japan )
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