IT・科学
「ドーンという爆発音」
「ドーン」という音とともに、流れ星(火球)が現れた――。最近、そんな流れ星のニュースをよく目にしませんか?ことし1月中旬には、2日連続で火球が流れたという報告も。何か関連はあるのでしょうか?(デジタル企画報道部・東山正宜)
2日連続の「火球」 関連は?
今月15日、すでに明るくなった午前7時前の空に明るい流れ星(火球)が現れました。
通勤が始まる時間帯とあって多くの人が目撃し、SNSには「初めて見た」「びっくりした」といった驚きのほか、「ドーンという爆発音がした」といった報告が相次ぎました。
しかも、この翌朝にも再び、火球が流れたのです。
なにかの流星群だったのでしょうか。
神奈川県平塚市博物館の天文担当学芸員、藤井大地さんは「二つの火球はまったく別の方向から飛んできており、関係はないようです」と解析します。
藤井さんは「昨日に続き、2日続けて同じ時間帯に火球が流れましたが、偶然です。それぞれ異なる軌道を描いていました」と説明しました。
見かける流れ星ニュース 4年間で13記事
それにしても、こうした大きな流れ星が最近、よく流れているような気がしますよね。
そもそも「火球」とは、流れ星の中でも特に明るいもののことを言います。国際天文学連合(IAU)の定義では、金星くらいのマイナス4等より明るいもののことで、周囲が照らされて影ができるようなものもあります。大きな流れ星が大気中で燃え尽きることなく、地上まで落ちてくると「隕石(いんせき)」になります。
調べてみると、「火球」という言葉を含む記事は、朝日新聞デジタルだけで2019~2023年に少なくとも13本ありました。
「満月の空に火球」「破裂音?『聞こえた』投稿相次ぐ」「大火球、東京の西の空に出現」「昼のようでプチパニック」「沖縄で目撃相次ぐ」「落ちてくるかもと怖かった…」「まるで宝石が落ちたような美しさ」……。
見出しもどんどん大げさになっているように思えます。
カメラの感度アップ 意図せず写るケースも
なぜこれほど観測例が増えているのでしょうか。
これは、実際に流れ星が増えている……からではなく、デジタル機器の進歩と、SNSの発達が原因と考えられます。
近年はデジタルカメラの性能がどんどん向上し、流れ星もたくさん映るようになりました。
例えばYouTubeチャンネル「朝日新聞宇宙部」がハワイのマウナケア山頂に設置している星空カメラは、人間の8倍もの数の星を映すことができています。
こうした超高感度カメラが数百万円といった高価ではなく、20万~30万円で買えるようになったことで、多くの人が流れ星の監視をするようになりました。
例えば、日本の天文愛好家らでつくる世界最大級の流星観測網「SonotaCo(ソノタコ)ネットワーク」は、2020年7月に落下した「習志野隕石」の落下地点を予測したことで知られています。
「隕石が見つかるとしたら千葉県の習志野市や八千代市付近だ」と突き止め、実際に習志野市で見つかりました。
関東在住のソフトウェアエンジニア「SonotaCo」さんが開発した流星検出ソフトと高感度カメラを組み合わせることで、国内約30カ所の観測拠点で年間20万個以上の流星を観測し、一時は世界の流星研究者の論文の半数がここのデータを使っていたといいます。
デジタルカメラだけでなく、自動車のドライブレコーダーや、玄関先に設置するような監視カメラもどんどん感度が上がり、意図せずとも流れ星が写るようになりました。
すると、例えば車を運転していて火球を見かけたとき、これまでなら「気のせいかな?」とスルーしてしまっていたのが、ドライブレコーダーを再生して確認できるようになってきたのです。いまでは、3000円前後で購入できる非常に高感度な防水カメラも売られています。
さらに、SNSが広がったことで、「なにか光ったように見えたけど、気のせいかな?」と思ったとき、他の人が見ていないか確かめられるようにもなりました。
撮影できた人がSNSに投稿し、それがメディアに掲載されてさらに拡散することで、「やっぱりあれは流れ星だったんだ」と多くの人が確認できるようになったのです。
SNSで発信「流れ星の伝道師」の存在も
YouTube宇宙部のアカウントを運営している記者は、平塚市博物館の藤井さんの存在も大きいと思います。
藤井さんは平塚市や静岡県富士市などに設置した計50台のカメラで流れ星を常時監視していて、大きな流れ星が現れるや否や、SNSに流れ星の動画を投稿してくれます。
驚くべきはその反応の早さで、真夜中だろうが夜明け前だろうが瞬時に投稿し、軌道も特定してしまうほか、私のようなメディア関係者がいつ連絡してもすぐに返事が来ます。
藤井さんが瞬時に情報発信をしてくれることで、流れ星のニュースが発信されやすくなっているのは間違いないと思います。まさに流れ星の伝道師と言えるでしょう。
※この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
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