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Monday, October 23, 2023

【マセラティ MC20】レースの興奮を公道で味わえるイタリアンスーパーカー - Goo-net(グーネット)

文●九島辰也 写真●

 久しぶりに緊張するクルマに乗った。マセラティMC20チェロである。スタイリングは見たまんまのスーパーカー。地上最低高は低く、ちょっとした勾配にも気を使いそうだ。フロントチンスポイラーのみならずリアディフューザーも下までグッと回り込んでいる。駐車場の「車止め」には要注意だろう。

この記事の目次

マセラティを象徴するオープンエア・スーパースポーツ

マセラティ MC20(全長×全幅×全高:4669×2178×1224mm、車重:1500kg)

 このクルマのベースはクーペボディのMC20。“マセラティ・コルサ”の頭文字と新世代へ突入する2020年を意図してネーミングが付けられた。チェロ(Cielo)はイタリア語の“空”。“スパイダー”や“ロードスター”といったワードをあえて外し、彼ら流の表現でオープンエアモータリングを表現した。

 トップは電動格納式のガラスルーフが採用される。稼働時間は12秒で、モニター内の矢印をタッチして行う。多くのオープンモデルがセンターコンソールやルームミラー付近に専用スイッチを用意するが、それとは違うロジックだ。でもってこのガラスルーフが凝っている。高分子分散型液晶(PDLC)が一瞬で透明ガラスをスモークにするスマートガラスなのだ。陽射しの強い日は効果を発揮するだろう。とはいえ、ガラスなので今年のような日本の真夏は少々厳しいかもしれない。それでもあえてガラスルーフにし車両重要をクーペ+65kgに抑えたのは立派。若干の補強は必要だったろうが、精緻なスリム化は行われている。唯一の欠点はルーフの格納場所を確保するため外からエンジンが見えなくなったことだけ。ガラス越しにエンジンが見えないのは残念だ。

マセラティ MC20

 そのパワーソースは3リッターV6ツインターボが搭載される。ネーミングは“ネットゥーノ”。ネプチューンのイタリア語が付けられた。最高出力は630ps、最大トルクは730Nm、最高速度は時速325キロ、0-100km/h加速は2.9秒という数字が羅列する。V6ターボもここまで来たか!と言った印象だ。ちなみに、マセラティの新しいSUVグレカーレのトップエンドモデル、トロフィオも同じV6ユニットが積まれる。こちらはそれをウェットサンプ方式にし530psにディチューンしているが、フィーリングはそのまま残っていることを付け加えよう。そういえば、そろそろ日本上陸するグランツーリズモもこのユニットを積むグレードをラインナップする。なるほど、こいつの汎用性は高そうだ。

V6エンジンは意外にジェントルで乗り心地も快適

マセラティ MC20

 それじゃ実際に走らせた印象に移ろう。低めのドライバーズシートに座りステアリング上のスタータースイッチを押すとエンジンに火が入る。瞬間威勢のいい音が響き、モンスターが目覚めると言った印象だ。とはいえ、V6ユニットはそこまで過激ではない。12気筒や8気筒よりもジェントルとなる。

 走り出しはスムーズで操作に難しさはない。8速DCTのギアボックスは滑らかで、トルコン式に近いフィーリングを出す。時としてシーケンシャル的な音が聞こえることもあるが、総体的には使いやすい。そして驚くのは乗り心地。ドライブモードをデフォルトの“GT”にしておくとかなりソフトな感触を得る。前後20インチのこの見かけからは想像できない快適さだ。

 ところが“スポーツ”にすると一気にキャラ変する。アクセルはよりシビアになり、レスポンスは明らかにクイックさを帯び始める。でもって足は固められスタビリティ優先仕様となるのだ。低速域のピッチングはレーシングカーのようである。

 ただ、このスタイリングからしてイメージされるのは明らかに“スポーツ”の方で、ユーザーからしたら許容範囲と言える。となると、デフォルトはこちらで、“GT”は“コンフォート”や“ECO”モード的存在かもしれない。もちろん、このクルマにどんな走りを求めるかの話だが、個人的にはそんな感じだった。

 と言った性格からもわかるように、こいつが活きるのは“スポーツ”モードもしくは“コルサ”モードでの高速域。レーシングカーというかゴーカートのような挙動でドライバーを楽しませてくれる。これだけクルマと一体になって走れれば誰も文句はつけられないだろう。レーシングカー作りを礎とするマセラティらしさがそこにある。

ブランド、スタイリング、走りが際立っている

マセラティ MC20

 それじゃネガティブポイントがないのかといえばそうでもない。全幅は広く、ドアミラーのステイも長いので、街中ではすれ違いに気を遣う。それと最低地上高の低さはやはり尋常ではない。ステアリング上のスイッチで油圧電動式のリフトはすぐに稼働してくれるが、必要頻度は思いのほか多い。ボディにはカーボンパーツばかりだから気の使い方はハンパない。

 とはいえ、それを上回る走りとスタイリングなのは確か。レーシーなマセラティの世界観を現代に蘇らせた容姿はピカリ光っている。こいつはまさに、クルマ好きには垂涎モノの、ブランド、スタイリング、走り、の全てが揃った一台となる。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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