中性子星の一種であるマグネターの想像図。天体物理学を覆すようなパルスを発する天体が発見された。
ICRAR
- 謎の天体が、22分ごとに地球に向けて電波を発射している。
- この種の天体が発する電波シグナルの周期は通常、時間の経過とともにゆっくりとしたペースになる。
- しかし、この天体は30年以上も同じ間隔でシグナルを送り続けており、その理由はまだ解明されていない。
30年以上もの間、22分ごとに地球に向かって電波を発射し続けている天体があり、科学者たちを困惑させている。これに関する研究論文が、2023年7月19日付でNatureに掲載された。
この天体は、磁極からエネルギーを発している死にかけた星だと考えられている。しかし、実在するにしては回転が遅すぎる。
「マグネターだと仮定すれば、この天体が電波を出すことはありえないはずだ。それなのに観測されている」と、オーストラリアのカーティン大学国際電波天文学研究センター(ICRAR)の電波天文学者で論文の筆頭著者であるナターシャ・ハーリー=ウォーカーは声明で述べている。
存在しないはずの驚くべき「宇宙の灯台」
強烈な磁場に支配されたマグネターと考えられるこの天体をイメージしたアニメーション。磁場はオレンジのラインで示されている。
ICRAR
「GPM J1839-10」と名付けられたこの天体は、回転速度が極めて遅く、安定しているため、他とは一線を画している。
「宇宙から繰り返し発信される電波シグナルは、通常もっと速く点滅している」とハーリー=ウォーカーはThe Conversationへの寄稿文に記している。
恒星は寿命が尽きると、崩壊して中性子星になる。これは何十億トンもの物質をほんのわずかなスペースに凝縮した超高密度の天体だとアメリカ航空宇宙局(NASA)は解説している。
中性子星の中には、磁極からまばゆい光とエネルギーのビームを放つものもある。このビームは地球に降り注ぐときにだけ観測される。ちょうど、沖合のボートから点滅して見える灯台の光を見るようなものだ。
このようなビームが、あまりにも一貫した周期で地球に届くことから、最初にこれを検出した科学者は、地球外生命体からのメッセージではないかと誤解したほどだという。しかしその後、これは死にゆく星が宇宙に向けて放出するパルス状の電波であることが分かった。
この天体は「死線」を越えている
このようにパルスを発する中性子星は、次第に回転速度が遅くなり、「死線」に達して死に至るという。理論的な閾値としては、通常、パルスの間隔が数分以上になったときに「死線」を越えると考えられている。
しかし、GPM J1839-10が発するパルスの周期は22分間隔で、最大5分間続き、あらゆる予想を覆すものだった。
「我々が発見した天体は、電波を発生させるには回転が遅すぎる」とハーリー=ウォーカーは語っている。
このように超低速で回転する天体が発見されたのは今回が初めてではない。ハーリー=ウォーカーのチームは2018年に、およそ18分周期で1分間ずつパルスを発する「J162759.5−523504.3」を発見した。この天体は強力な磁場を持つ中性子星の一種、「マグネター」だろうとチームは考えた。
死に抵抗する瀕死の星
天体からのシグナルを拾うために使われた西オーストラリアにある低周波電波望遠鏡「マーチソン・ワイドフィールド・アレイ」。
Pete Wheeler, ICRAR
GPM J1839-10の謎を解明しようと、チームはアーカイブデータに目を通した。そして「本当の驚き」を発見したという。
この天体のパルスのデータは、何年もの間、世界中の天文台によって気づかれることなく採集されていた。ハーリー=ウォーカーによると「この天体は時計のように規則正しく1318.1957秒(約22分)ごとにパルスを生み出していた。誤差はわずか10分の1ミリ秒だった」という。
このことは、中性子星に関するこれまでの知識を覆すものだった。中性子星は回転が減速すると、数カ月で消滅すると考えられていた。例えば、「J162759.5−523504.3」は、2018年1月から3月までの短い間だけ燃え上がるようなパルスを発した。
しかし、GPM J1839-10のパルスの最初の記録は1988年、つまり約35年前にさかのぼる。
これは、この天体がまったく新しいタイプの恒星系であることを意味するのかもしれない。
「宇宙の中でもかなり風変りで過激な天体である中性子星とマグネターに対する我々の理解に、この驚くべき天体は挑戦を仕掛けているかのようだ」とハーリー=ウォーカーは言う。
研究チームは今後、この観測結果を、既知の天体物理学と整合させようとしている。
「この現象の背後にどのようなメカニズムがあるにせよ、とにかく驚異的なことだ」
からの記事と詳細 ( 理論上ありえない謎の天体からのシグナル…30年以上前から22分おきに地球に到達 - Business Insider Japan )
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