2018年に火星に到着したNASAの探査機「インサイト」は、空を見上げるようには造られていない。同探査機の目的は、地震を観測して、火星の内部構造の解明に役立てることだ。
しかし実際のところ、インサイトは空から落ちてくる隕石による衝撃も拾っている。科学者らはこのたび、4つの隕石の衝突による音と震動(地震波)を特定して解析し、さらに軌道上から撮影された画像上でも、衝突によって形成されたクレーターを確認した。論文は9月19日付けで学術誌「Nature Geoscience」に掲載された。
「人間の技術が、ほかの惑星における地震波を観測し、隕石の衝突で起こったことと関連付けられるほど進歩したというのはすばらしいことです」と、カナダ、ウエスタン大学で同じ現象を研究しているエリザベス・シルバー氏は言う。なお氏は今回の研究に関わっていない。
月では、アポロ時代の地震計が100回以上の隕石衝突を観測したものの、そのデータと、結果としてできたクレーターとの関連が確かめられたことは一度もなかった。
今や、火星の観測にかかわる科学者たちは、隕石の衝突を利用して惑星内部の地図の精度をさらに上げられるようになった。
「こうした衝突の大きな利点は、発生源の場所がわかっていることです」。論文の筆頭著者で、フランス、トゥールーズ大学航空宇宙大学院に所属するラファエル・ガルシア氏はそう述べている。「あとは内部構造を解明するだけです」
しかし、すでにソーラーパネルが塵に覆われてしまったインサイトにとって、活動可能な時間は残り少なく、今年の末まではもたないかもしれないと言われている。
「楽観的に見れば1月までもつとも考えられますが、おそらくはその途中のどこかで、大気中の塵が急増して、そのまま活動ができなくなるのではないかと思われます」と、NASAのインサイト・ミッションの主任研究者ブルース・バナート氏は述べている。
1300以上の揺れを観測、地震の解析による進展も
インサイトの着陸地点「エリシウム平原」は、チームが確認できた中で最も何もない平らな砂地で、火星の赤道付近に位置する。
巨大な火山、地溝帯、極地の氷冠など、火星のドラマチックな地形を観測する探査機とは異なり、インサイトの仕事は地面の下を見ることだ。そのためには、邪魔なものが存在せず、観測機器に電力を供給してくれる太陽光が十分に得られる場所が望ましい。
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