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Monday, July 18, 2022

『Stray』レビュー。極まりまくった猫描写と廃墟美が詰まったアクションアドベンチャーを理解するための5つのポイントを紹介 - ファミ通.com

 猫が九龍城風のジャンクシティを進んでいく映像が大きな話題を呼んだアクションアドベンチャーゲーム『Stray』がいよいよ発売。PC用のレビュー版をプレイしたので、実際どういうゲームなのか、その内容をご紹介しましょう。

 本作の対応プラットフォームはプレイステーション4/5およびPC。いずれも日本語対応しており、19日朝にPS版がその後深夜にSteam版が発売される予定です。

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1. 思った以上に猫表現がスゴい

 本作の主人公は猫。アクシデントによって地下世界に迷い込んでしまった一匹の猫が、文明崩壊後のかつてのダムのような場所でともに暮らしていた仲間たちのもとに戻ろうとする話になります。

 というわけで、あらゆるアクションが猫の動作として作られているのが特徴です。もっとも重要なのが移動アクション。ひさしやエアコンの室外機やチョット張り出した板など、いろんな場所に飛び乗って進んでいけます。

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猫だけが通れる場所をガンガン進んでいく移動アクションが軸。
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現在の目標をB-12が教えてくれるコマンドがあったり、序盤では鳴くと進むべきルートがそれとなく示されたり、背景アートの一環としてモロに描いてあったりする。

 ゲームの本筋とあんまり関係がなさそうな猫アクションも揃っており、戸棚や机の上に乗っている物を落としたり、壁やラグや革張りのソファーなどいろんなところで爪を研げるし、ブランケットの上などでゲームの進行を無視して勝手に寝たりもできます。

 そしてこれらがまったくゲーム的に無意味なわけではないんですが、「爪を研ぐと攻撃力が上がる」とか「寝ると体力が回復する」といったような直接的メリットはありません。爪を研ぎたい気分の時は飽きるまで研げばいいし、先に進みたい時は無視して進めばいい。だって猫なんですから。

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革のソファーだろうが気にしないんだぜ、猫だから。
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これカットシーンとかじゃないですからね。寝られるスポットではスゲー無駄に寝られる。

2. サイバーパンクものというよりポストアポカリプスもの

 自律した意識を持つ高度なドローンやロボットたちが生活しているという技術描写や、冒頭で触れたようなジャンクシティ描写が軸になっていることからサイバーパンク作品と捉えられがちな本作ですが(というか記者も過去にそう書いたことがある)、実際遊んでみるとちょっと違う感じです。

 というのも、サイバーパンクで重要なキーとなるサイボーグ技術も高度なネットワークも出てきません。ジャンル的にはむしろ、核戦争などで崩壊した世界を舞台とするポストアポカリプスものの一種と言えるでしょう。『フォールアウト』シリーズなどと同様、そういった崩れ行く世界のジャンクなスラム街や廃墟美を愛でるタイプのものになります。

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こういう絵面の街エリアはふたつばかり出てくる。
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廃墟とか放水路とか好きな人にはたまらん感じのゲームでもあります。

 ゲームの進行は一本道で、移動アクションを駆使して目的地について問題を解決すると次のエリアに……という比較的クラシックな作り。オープンワールドではないのですが、エリアを限定して作りこんでいる分、その廃墟美はめちゃくちゃいい感じです。

 またゲーム中には比較的自由に行動できるハブエリアとなる場所がいくつかあります。その中の一見重要そうでないミッションがメインクエストの問題解決の役に立ったり、軽い収集系のサイドミッション的なものが用意されていたりもするので、ジャンクシティのすみずみまで猫として散策しながら(猫)目を光らせてみるといいでしょう。

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楽譜を見つけたら彼女に渡そう。別にアイテムをくれたりするわけではないが、ローファイな感じのギターを演奏してくれる。

3. 猫とドローンの相棒モノとしてアツい

 主人公の猫は地下世界で自律型ドローンの“B-12”と出会い、冒険をともにすることになります。“家族と再開するために地上世界を目指す猫”と“記憶をなくしたドローン”という種族が違うデコボココンビなんですが、この二者が静かに絆を紡いでいくのがアツい。

 両者の利害関係は一応あり、B-12は連続飛行可能な行動範囲が限られているので、普段は猫のハーネスに収まって運んでもらうことではじめて自身の探究の旅ができます。その代わり彼(?)はロボットたちの言語を猫語に通訳してくれる能力や、ちょっとした機械のハッキング能力などを提供することで、猫のコミュニケーション能力や問題解決を助けるという関係性です。

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B-12は通訳役としても大事(B-12がいない時は話が通じないという描写もちゃんとある)

 そして冒険を続けていくと、猫とは別の理由で外の世界を目指すロボットたちと出会うことになります。彼らとも協力しあい、ともに困難を乗り越え、ときに彼らの思いを背負って進んでいくなかで、猫とB-12は運命をともにする相棒となっていきます。

 ちなみに、この世界に何があったかはB-12の失われた記憶に秘められており、壁面に残されたグラフィティなどからB-12の記憶を呼び起こせることがあります。情景と絡んだストーリーテリングが非常に大きな比重を持つゲームなので、この世界を満喫したい場合は深めに探索するのがオススメです(とはいえ行ける範囲は限られているのでそんなに難しくはない)。

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外の世界を目指しているロボット民たちとの出会いと別れも話の軸のひとつ。

4. ライトな探索やステルス要素などをミックスしたアドベンチャー

 すでに書いた通り、ゲームの進行は昔ながらの一本道のアクションアドベンチャーゲームの体裁。移動アクションをうまく使って目的地を目指し、軽い謎解きなども解いて問題を解決すると次のエリアに進み、新たな問題が立ちはだかる……という感じです。

 一方、B-12は戦闘用ボットではないですし、主人公は猫なので、基本的に戦闘能力はありません(戦える場面もあるっちゃあある)。地下世界にはびこる“ZURK”と呼ばれる人工生命体のようなものをはじめとした“敵”にあたる存在が出現するパートでは、猫の優れた移動能力でうまく逃げたり、ステルスゲーム的にかわすことになります。

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全編にわたってまったく戦う手段がないわけではないが、基本的に非戦闘系のゲームであり、ボトボトZURKが湧いてくる(キモい)なかを疾走するような逃走シーンが多め。
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監視ドローンのサーチライトを避けつつ進むシーン。

 ゲームの設計面では正直に言うと少々残念だった部分もあって、まずはマップ構造。進める場所はハブエリアを除くとかなり必要な部分のみに決まっていて、意外と広がりがありません。

 そしてもうひとつは、パズル要素がかなり弱いことです。ギミックを使う順番をうまく考えて解くようなパズルはほとんどなく、「この仕掛けを動かすと先に行ける」とか「ここを通れるのに気がつけばオーケー」といったようなシンプルで一次元的なものが大半です。

 なので、オープンワールド的な広がりやパズルアクションアドベンチャー的なものを期待すると肩透かしを食うことになると思います。とにかく情景描写とそれに絡んだストーリーテリングと猫の移動アクションに特化したゲームだと考えてください。

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ドラム缶転がしは本作のパズル要素の中で鍵となる存在。

5. やっぱり猫表現が極まりまくっててスゴい

 ゲーム的にあまり意味のない猫行動を取れるぐらい猫特化のゲームだというのは冒頭でも書きましたが、本当に猫描写への力の入れようはハンパじゃないです。

 たとえば特定のロボット民には足スリスリできるようになっているんですが、これがまた犬などのじゃれ方とは違う完全なる猫ムーブ。完全に別の方向を向きながら背中を丸めつつスリスリすると、ロボット民もハートマークを出して喜んでくれます。

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最初は「なんかフワフワの生物が来た!」と警戒心マックスだったロボット民たちもこの通り。チョロいな。
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ピアノに乗ればちゃんと不協和音が鳴ります。あと「キーボードの上に乗ったせいで意味不明な文字列が入力される」というギャグもある。

 あるいはビリヤードの台の上では無駄にボールをタシタシ叩けるし、麻雀の台に飛び乗って牌をまき散らすといった猫様ムーブも可能(ロボット民たちは「もう!」って怒った後に牌を拾う)。目が光源に向くと光る猫目シェーダーもあるし、さらに紙袋をかぶってヨロヨロ歩く謎行動(操作が反転される)まで用意されています。

 廃墟とジャンクシティがもたらす感傷と圧倒的な猫パワーの癒やしのミックス、それこそが『Stray』というゲームなのです。参考までに記者のクリアーまでのプレイ時間は4時間半程度。公式には「フルストーリーに8時間、収集なども含めた全クリアーに10時間」となっています。

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ゲームの本筋とはまったく関係ないのに猫ムーブ絡みで専用のリアクションや実績まで用意されているという気合いの入れっぷり。

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