今月初め、NASAの火星探査ローバー「パーサヴィアランス」は、火星の衛星の1つであるフォボスが太陽を横切っているのを発見した。これによって約40秒間の日食が起こり、ローバーが搭載するMastcam-Zカメラシステムによってその様子が記録された。
火星には衛星が2つあるとされ、フォボスはそのうち大きい方。それでも非常に小さく、直径でわずか27×22×17kmほどの大きさだという。そのため、火星で完全な日食が発生することはなく、太陽の一部は常に火星の衛星の影の後ろから常に姿を現している。今回観察されたのも、もちろん部分日食だった。
火星の日食の映像は、2012年のローバー「キュリオシティ」が記録した映像をはじめ、これまでに何度も目にしたことがある。では、今回の「パーサヴィアランス」の映像はこれまでと何が違うかというと、NASAのジェット推進研究所(JPL)によれば、「これまでで最もズームインして撮影された日食の映像であり、かつ最高のフレームレート」であること。Mastcam-Zカメラは、以前までのローバーのカメラより大きくアップグレードした機能を搭載し、ズームとカラー撮影ができるほか、さらに「サングラスのように機能して光の強度を抑える」ソーラーフィルターを備えている。そのため、フォボスのゴツゴツした影が太陽を横切って通過し、いくつかの黒点がオレンジ色の表面に点在しているのをはっきりと見ることができるのだそうだ。
この映像は、フォボスの軌道と火星との関係を研究している科学者にとっても役立つものであることは間違いないだろう。衛星が惑星を周回するとき、2つの物体は互いに引力を及ぼし合う。フォボスは火星の地殻と内部を引っ張り、一方で火星の重力はフォボスを火星に向かって引き寄せ、軌道を変えようとする力が働く。実際フォボスは、100年ごとに1.8m以上のペースで火星方向に引っ張られていて、次の数千万年で最終的に引き離されると考えられている。
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