米マイクロソフトが、米国のゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを、687億ドル(約7兆8700億円)を投じて買収する。
アクティビジョンは、第二次世界大戦を題材にした「コール・オブ・デューティ」や、剣と魔法の世界を舞台とした「ウォークラフト」といったオンライン戦闘ゲームで人気を集めているゲーム会社。月間利用者数は約4億人に達するとされ、同社のゲームはeスポーツでも広く採用されている。
この巨額買収によって、マイクロソフトは中国のテンセント、日本のソニーグループに次ぐゲーム事業世界3位に躍り出る。マイクロソフトの狙いはゲームだけではなく、注目される次世代の「主戦場」にもあった。買収は2022年1月18日に発表され、23年半ばまでの手続き完了を目指している。
主戦場は「メタバース」
パソコンの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で知られるマイクロソフトは、2000年にゲーム事業への参入を表明。翌年には家庭用ゲーム機「Xbox」を発売した。
ゲームソフトの開発も手掛け、これまでもゲーム会社の買収を進めて規模を拡大させてきた。現在、ゲーム事業は月額制の有料サービス「ゲームパス」を軸に展開しており、そこにアクティビジョンの人気ゲームを加えることで会員数の更なる拡大を目指す。
今回の買収額はマイクロソフトにとって過去最大となる。アクティビジョン・ブリザードのゲームは、ソニーグループのゲーム機「プレイステーション」にも提供されており、今回の買収発表でゲーム業界の競争が激化すると見込まれている。買収発表翌日のソニーグループの株価は10%超も下落したほどだ。
一方、アクティビジョン買収は、ゲーム事業にとどまらない狙いがあった。「メタバースを支える強力なエコシステム(収益環境)をつくる」とマイクロソフトのサディア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が述べた通り、それは人々が交流する仮想空間「メタバース」だ。
旧フェイスブックが「メタ」に社名を変更したことで、一躍注目を集めるようになったメタバース。インターネットを介した交流は文字で始まり、通信技術の発展に伴って音声や相手の姿を見ながらの会話まで広がってきた。これをさらに発展させて、インターネット上に仮想空間を創造して、その中で参加者がアバター(分身)として行動したり、他のアバターと交流したりする。
オンライン戦闘ゲームは、インターネット上につくられた仮想空間で人間が操作するキャラクターが無数に参加しながら、仲間になったり敵と戦ったりする。こうしたゲームを製作する技術はメタバースと共通するものであり、マイクロソフトは今回の買収によって、有力企業が相次いで開発に乗り出すメタバースで先手を打った格好だ。
米国のIT企業の草分け的存在でありながら、モバイル化とクラウド化に乗り遅れたマイクロソフトは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)に盟主の座を奪われていた。だが、2014年にCEOに就いたナデラ氏が進めた改革によって勢いを取り戻し、いまやGAFAMとも呼ばれるようになった。
次の主戦場となったメタバースで、マイクロソフトはかつての輝きを取り戻せるか。それはソニーグループなど日本勢にも大きな影響を与えるだけに、注目が集まる。(ジャーナリスト 済田経夫)
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