東京オリンピックが敢行される中、全国的に新型コロナの新規患者が激増している。高齢者の割合が少なく重症者や死者が少ないことから楽観視する意見も出始めているが、この状態を放置し続けて大丈夫なのだろうか。
すでに70代、80代も第4波なみ
この7月31日、新型コロナの新規患者は、首都圏の1都3県の全てで過去最多となった。一方、東京オリンピックは後半に入り、観客を入れている首都圏以外の会場には選手や関係者、ボランティアを含め、多くの人が集まっている。
今は明らかに新型コロナの「第5波」となっていて、外出自粛や飲食業の制限などの感染対策と東京オリンピック開催というダブル・スタンダードが招いた、ある意味で危惧されてきた状況になっている。
ワクチン接種が医療従事者や65歳以上の高齢者で進み、そのため、感染者の割合は20代から50代までのまだワクチン接種が進んでいない世代で増えているのも事実だ。また、重症者や死者はこれまでの感染拡大時に比べて少なくなっていて、無症状を含めた軽症者や中等症の患者が増えている。
だが、中等症の感染者が増えれば、そうした患者のためのベッドが足りなくなり、中等症から重症化するケースの割合が増えれば、さらに医療資源を圧迫するのは当然のことだろう。若年層は重症化しにくいから、重症者が少ないから、といっても、このまま新規患者が増えていけば状況はさらに危機的になってくる。
そもそも本当に高齢者の感染者は少なくなっているのだろうか。東京都が発表した年代別の新規患者の実数をみると、確かに10代から50代のワクチン未接種の世代の新規患者が急増している。では、かなりの割合でワクチンを接種済みの60代以上の新規患者はどうだろうか。
60代から90代の新規患者の実数をみると、若い世代と同じように増減していることがわかる。そして、若年層より一桁少ない数だが、ワクチンを接種した人の多い世代でも7月に入って60代で急増し、70代、80代でも第4波と同じくらいに新規患者が増えているのだ。
ワクチンの効果を凌駕し、高齢者でも新規患者が急増しているのがこの第5波といえる。若年層の割合が多いことが指摘されているが、まだ重症者や死者が少ないからといって感染拡大を放置していいはずはない。
さらに、新型コロナでは、たとえ軽症や中等症でも若い世代を含め、深刻な後遺症が起きる危険性がある。
スイスの研究グループが発表した31の研究を比較検討した論文(※1)によれば、50歳未満の成人が新型コロナにかかった後の後遺症について分析している。これによると後遺症は長い場合、3ヶ月も続き、倦怠感、息切れ、生活の質(QOL)の低下、呼吸器の障害、心臓などの炎症、神経性疾患、嗅覚障害などの症状が続いたという。
また、英国の研究グループが後遺症に関する27の研究を比較検討した論文(※2)によれば、同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の場合、3.5年も後遺症に悩まされるケースがあるとし、新型コロナでは15%も再入院が必要になるとした研究もあったという。
もちろん「いたずらに危機を煽る」つもりは毛頭ない。だが、新規感染者の増大を若年層が中心だからといって放置し続ければ、働き盛りの世代を含む若年層で、こうした長く続く後遺症の患者が増えていくことになる。高齢者の新規感染者が急増していることと同時に、後遺症患者の増大は将来の社会の大きな負担となる危険性があるのではないだろうか。
※1:Sandra Willi, et al., "COVID-19 sequelae in adults aged less than 50 yeas: A systematic review" Travel Medicine and Infectious Disease, Vol.40, 22, February, 2021
※2:Olalekan Lee Aiyegbusi, et al., "Symptoms, complications and management of long COVID: a review" Journal of the Royal Society of Medicine, doi.org/10.1177/01410768211032850, 15, July, 2021
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