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Thursday, July 1, 2021

【Memory of Movies】第3回:『スパイダーマン』~突如現れた‘‘親愛なる隣人’’~ - ガジェット通信

【Memory of Movies】第3回:『スパイダーマン』~突如現れた‘‘親愛なる隣人’’~

これまでの映画人生を振り返る回顧録のようなものを執筆したいと思い立ち、いまに至る。こんな、ライターの端くれである筆者の回顧録なんていうのは大したものではないが、お付き合いいただける読者がいてくれたら幸いだ。今回は、初めてアメコミヒーローに触れた瞬間を振り返ってみようと思う。

小学校低学年の頃は、ひたすら『ウルトラマン』や『仮面ライダー』などの特撮作品に興味を惹かれた。
地球の平和を守るヒーローたちの姿が眩しすぎて、その輝かしい勇姿に憧れ続けたものだ。
そんな私が小学校高学年に上がったばかりの頃、ある出会いがヒーローの概念を覆す。
その出会いは本当に偶然だった・・・。

突如現れた‘‘親愛なる隣人’’

アメリカのヒーローというものをまだ知らなかった未熟な私は、叔父から信じられない話を耳にする。
「スパイダーマンという蜘蛛の力を使うヒーローがいる」と。驚愕した。
私にはその話をにわかに信じがたい理由があった。
蜘蛛と言えば、『仮面ライダー』の蜘蛛男のイメージが強く、日本のヒーロー作品では、いわば悪役の代名詞的存在である。
そんな敵のようなヒーローとは一体どのような姿かたちをしているのか。
驚きと疑念が交差しながらも、どこか興味を惹かれていたのだ。

【Memory of Movies】第3回:『スパイダーマン』~突如現れた‘‘親愛なる隣人’’~

『スパイダーマン』(2002)

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叔父から『スパイダーマン』のDVDを借りた私は、画面狭しと躍動する‘‘蜘蛛男’’の姿に、再度、驚愕した。
まさか、‘‘蜘蛛男’’がこんなにもカッコいいとは!
2002年公開のサム・ライミ監督による『スパイダーマン』は、どこにでもいるような普通の高校生ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)が、特殊な蜘蛛に噛まれたことによって、超人的パワーを手にし、緑の怪人グリーン・ゴブリンと死闘を繰り広げる様が描かれる。
壁に張り付き、蜘蛛糸で縦横無尽にビルからビルへと飛び移るスパイダーマンが、とにかくカッコ良かった。
たった一度の鑑賞で、スパイダーマンの虜になってしまったのだ。

なぜ、スパイダーマンに惹かれたのか?

それからというもの、続編が公開されるまでの間、私はひたすら『スパイダーマン』1作目を見続けた。セリフを覚えてしまうほどだ。
もしかしたら、これまでの映画人生の中でもTOP3にランクインするほどかもしれない。それだけ、当時の私のスパイダーマン熱は取りつかれたようなものだった。文字通り、‘‘観まくった’’のである。
そして、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにスパイダーマンのアトラクションが誕生した際にも真っ先に遊びに出かけ、グッズも大量に購入。
それまでは仮面ライダーやウルトラマンに傾いていた心がスパイダーマンひと筋にまでなってしまった。
さらに、当時のカートゥーン・ネットワークでは、1990年代に製作されたTVアニメ版の『スパイダーマン』も放送されていたことから、ますますスパイダーマン熱を帯びることになる。

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『スパイダーマン』(2002)

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なぜ、ここまでスパイダーマンに惹かれたのか?
子供心にカッコいいからというのが最たる理由であるが、やはりスパイダーマンは等身大のヒーロー像を体現しているからではないか。
学校ではいじめられっ子の青年が、突如としてスーパーパワーを手にしたら、周囲に自らの力を証明したいという気持ちにかられるだろう。
しかし、それをベンおじさんによる「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉でグッと抑え込む。
ヒーローというのは、周囲に正体を知られてはいけない。孤独な存在なのだ。
そんなヒーロー像が『仮面ライダー』や『ウルトラマン』といったヒーロー作品を観ていた私の心に刺さったのだろう。

一本の映画との出会いというのは、かけがえのないもの

【Memory of Movies】第3回:『スパイダーマン』~突如現れた‘‘親愛なる隣人’’~

『スパイダーマン』(2002)

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その後の『スパイダーマン2』(2004)と『スパイダーマン3』(2007)はしっかりと劇場で鑑賞し、さらなる続編も期待されたが、あえなくサム・ライミ版はここで完結。
『アメイジング・スパイダーマン』シリーズやマーベル・シネマティック・ユニバース版など、リブートが幾度となく繰り返され、2人のスパイダーマン(アンドリュー・ガーフィールドとトム・ホランド)が誕生したわけだが、私にとってのスパイダーマン=ピーター・パーカーは、いつまで経ってもトビー・マグワイアであるため、どうしてもその他のスパイダーマンには違和感を感じてしまう。
それだけ思い入れが強いということだ。
私の叔父はベンおじさんのような立派な善行で知られる人間ではないが、偶然にもピーターと同じように、叔父がいなければ、いまの自分はいなかっただろうとつくづく思う。

現在は映画ライターとしてマーベル作品のお仕事をいただくことも多いのだが、あの日の‘‘親愛なる隣人’’との出会いがなければ、マーベルもといアメコミ作品に触れることはなかったかもしれない。
そうすれば、映画ライターとして活動する未来もなかったかもしれない。
そう考えると、一本の映画との出会いというのは、かけがえのないものなのだ。
子供の頃に虜になった‘‘親愛なる隣人’’は、年を重ねた今になっても、私にとって最高のヒーローであり、どんなに魅力的なヒーローが現れようとも、その座を譲ることのない最も好きなヒーローである。
(文・構成:zash)

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