――筆者のジョアンナ・スターンはWSJパーソナルテクノロジー担当コラム二スト
私はこの件について、ぜひ電話をしたいです。「電話」といっても決して「ビデオ電話」を意味しているのではありません。純粋な電話をしましょう。お互いの美しい声だけが聞こえる昔ながらのあれです。
あなたが何をしていようとも、ウェブカメラには触らないでください。
(音声での)おしゃべりを楽しみにしています。
ジョアンナより
思い切って行動すべきときがきた。もう絶え間ないビデオ通話はやめにしよう。
新型コロナウイルス禍前を思い出してほしい。電話のたびに背景に映る自宅の本棚の本を色順に並べ替え、ウェブカメラを起動し、顔が並んだ格子を何時間も見つめ続けずに済んだ遠い昔を――。ビデオ通話はかつて、めったにない楽しみだった。だが今では日々、魂を吸い取られている。
実際、それを裏付ける証拠もある。スウェーデンのヨーテボリ大学と米スタンフォード大学の研究者が最近発表した調査論文で、頻繁なビデオ通話は全般的、社会的、感情的、視覚的、動機的疲労を引き起こしかねないことが明らかにされた。
ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのエリック・ユアン最高経営責任者(CEO)でさえも、「ズーム疲れ」に見舞われていると話している。
何もビデオ通話を一切やめるべきだと言っているわけではない。筆者もビデオ通話は大好きだ。ほとんど遅延なく即座に相手の顔を見て話が聞けるのは、奇跡的だ。聴覚障害のある筆者の母親は筆者が子どものころ、電話で筆者の声を聞き取るのに苦労していた。だが今はどこにいても孫の顔を見ることができ、視覚的な合図は彼女にとって大きな助けになっている。
ただ、音声通話の方が生産性が高い場合もある。また、音声の質もこれまで以上に良くなっている。
しかし、どのような場合にビデオ通話よりも音声通話を選ぶべきなのか。また、会議でカメラの起動をかたくなに拒否するひねくれ者にならずに、音声通話をするにはどうすればいいのか。そこで研究者や科学技術者らに話を聞き、自身もビデオ通話を減らしてみた結果、以下のことが分かった。「正気を取り戻すための五つのステップ」を紹介する。
ステップ1:電子メールでは駄目なのかを尋ねる
会議が多すぎると感じている人が大勢いるのは事実だ。したがって、どのような形態で会議を行うかを決める前に、ぜひこう尋ねてほしい。「このミーティングは本当に必要ですか?」
ステップ2:音声とビデオそれぞれの利点を理解する
ヨーテボリ大学助教で前出の研究の筆頭研究者を務めたジェラルディン・フォービル氏は、ビデオが認知的消耗を引き起こしかねない主な理由を分かりやすく説明している。
・自分自身をたくさん見る。これは不自然なことである上、自己評価や精査を伴う。こうした「ミラー効果」は、特に女性で顕著な場合がある。これは、ズームや「Google Meet(グーグルミート)」の画面から自分自身の映像を隠す機能を使うことで対処できる。グーグルはこの問題に具体的に対処するさまざまな機能を追加している。マイクロソフトの「Teams(チームズ)」にも、これに対処する新機能「Together(きずな)モード」が導入された。
・クローズアップでのアイコンタクトがたくさんある。実際、脳はそのようなスペースの侵害を、求愛または戦闘の前兆として処理する。
・たくさん座っているため、とらわれているように感じる。テレビ会議の間は立ち上がって歩き回ることはできない。
・たくさんうなずく。「相手に合図を伝えるためには、合図を強める必要がある」とフォービル氏は話す。「そのため、同じ部屋にいるときよりも、積極的にうなずくようになる」
これでは疲れるのも無理はない。明白な解決策はビデオ通話の回数や長さを制限することのように見える。一部の人はオフィスと在宅を組み合わせたハイブリッド勤務を始めており、いずれおのずとそうなるだろう。
しかし、音声通話は在宅勤務というビュッフェの単なる食べ残しではない。相手の言っていることに集中できる上、画面から一時的に解放してくれる。筆者は今では上司との週次会議を電話でしている。ビデオ通話は業績評価など、より深い会話に取ってある。
また、しばらく連絡を取っていない同僚や表情を読み取ることが不可欠な重要な会議には、ビデオ通話をする方がいい。
ステップ3:音声通話であることを明確にする
音声通話をすることを決めた場合、それを相手に伝える必要がある。
このことに関するばつの悪い会話で貴重なミーティングの時間を無駄にすべきではない。電話の前に「この打ち合わせはビデオではなく音声通話でやりたいんだけど、問題ない?」と率直に言うべきだ。筆者を言い訳にして「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の素晴らしいコラムで、ビデオ通話のやりすぎは良くないと読んだんだけど」と言ってもいい。
ステップ4:電話をかける
筆者は同僚に音声通話を好むことを伝えてあるが、単にスマートフォンに手を伸ばすだけではない。実際、大手のビデオ会議サービスを全て使用している。ただし、ビデオなしでだ。ズーム、グーグルミート、「Slack(スラック)」、「FaceTime(フェースタイム)」、「WatsApp(ワッツアップ)」、「Facebook Messenger(フェイスブックメッセンジャー)」はどれも、接続環境さえ良ければ、安定した明瞭な音声通話ができる。大半は携帯電話よりも音質がいい。良質なマイクを使用していれば、なおさらだ。しかし、一番いいのは、最も相手に連絡が取りやすいツールを使用することだ。
筆者は仕事の電話にはスラックを使っている。既にほとんどの仕事仲間がスラックに常駐しているため、デスクに立ち寄る感覚で話しかけられる。「通話」ボタンを押せば、自動的に音声通話になる(ビデオを使用するには、カメラアイコンをタップする)。この1年でスラックの音声利用が急増したため、同社は新しいグループ音声通話機能を試している。いわば「Clubhouse(クラブハウス)」やツイッターの「Spaces(スペース)」機能のオフィス版だ。
スラックで製品・顧客体験担当バイスプレジデントを務めるアリ・レイル氏によると、同社では音質の向上やデスクトップ通話とモバイル通話を切り替えやすくすることを目指している。
通話の質については、筆者にとってはフェースタイムの音声が一貫して最もいい。筆者は編集者とよくフェースタイム経由で話すが、彼の声は非常に明瞭に聞こえる。難点はアップル端末でしか使えないことだ。
ステップ5:ビデオ禁止デーを設ける
「ズーム疲れを抑制する責任があるのは個人だけではない」。フォービル氏は筆者にこう語った。「われわれの知見が企業にビデオ会議の再考を促すことを期待している」
現在のところ、それはうまく行っている。シティグループのジェーン・フレイザーCEOは、「ズームフリー・フライデー」を導入し、金曜日は社内のビデオ会議を一切しない制度を開始した。カリフォルニア大学バークレー校もこの1年、金曜日の午後は定例会議を一切行わないようにしているという。
同様の方針を試してみてもいいかもしれない。あるいは、少なくとも「あなたは私の顔を見たくないだろうし、私もあなたの顔を見たくない」のすごく丁寧なメールでの言い回しを考え始めておくべきだ。
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