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Wednesday, March 17, 2021

「アンティキティラ島の機械」の新モデル天才すぎ。絶対作れなさそう - GIZMODO JAPAN

星はめぐり、月は沈み、海の泡と消えた元祖オーパーツ。

ギリシャのクレタ島沖の難破船から1901年に引き揚げられてからずっと謎だった2000年前の「アンティキティラ島の機械」。その主な用途とメカニズムがデジタルの最新モデルで解明されました。成果はScientific Reportsに掲載中です。

論文を主にまとめたのは、ユニバーシティ・オブ・カレッジ・ロンドン(UCL)Tony Freeth機械工学名誉教授(「アンティキティラ島の機械」研究プロジェクト創設メンバー)。「全物証に準拠し、機械に刻まれた科学的な説明とも一致する」初のモデルだと、声明でその意味を語っています。

「アンティキティラ島の機械」って何?

「アンティキティラ島の機械」は最古のアナログ天文学計算機で、日食や月食といった天体の運行、太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星の位置を手動で割り出せる道具

海底から回収されたのは3分の1なのですが、同時代の遺物とは明らかに技術レベルが異なることから「だれが何のために?」と謎が謎を呼び、青銅の歯車30個、断片82個から原型と用途、構造を解き明かす試みが100年に渡って続けられてきました。

2016年にはX線スキャンでギリシャ文字3,500字の読み出しに成功。プログラム可能なコンピュータ…ではなかったけど、宇宙の中での現在地、日食や月食といった天体ショーの時期を予測する構造が組み込まれたマシンであることがわかっています。

「天才の創造物」

一番大きな塊は「Fragment A」といってベアリング、柱複数、ブロック1個から成るのに対し、「Fragment D」は用途不明の円盤と63歯の歯車、プレート1枚を含みます。最新研究で目指したのは、フロントの歯車部分(大部分が失われている)の謎に迫ること。

道具に刻まれた文字には、惑星と月の動きをリング上を動くビーズで示すという仕様があるのに、これに忠実に従うモデルは「過去に例がない」ことに着目し、この失われたパーツの再現に挑みました。

言葉で言うのは簡単ですが、「複雑な3Dパズルを解くようなもので、解明で浮上したのは、バビロニア天文学、プラトン学派の数学、古代ギリシャの天文学理論の天体周期を見事に組み合わせた、天才の創造物というべきもの」だったといいます。

事実、ヨーロッパ人よりはるか前に天体の動きを観測し、楔形文字で記録に残していたのは古代バビロニア人でした。こうした運動の数理モデルに挑んだのはギリシャの哲学者パルメニデス。こうした知のすべてがここに集まっていたのです。

天動説の宇宙を手のひらに

「アンティキティラ島の機械」の文字には金星のサイクルは462年、土星は442年とあります。これは各の惑星が元の位置に戻るまでの周期をあらわし、天動説の古代ギリシャの世界観では非常に重要な意味をもつ数です。

地球も惑星も太陽の周りを回っているので、肉眼で空を見上げると、少し止まって見えたり、進んだり戻ったり(逆行)して見えることもあります。目の錯覚なのですが、2019年には「月の逆光シーン」がネットで騒がれましたよね。英語の「planet(惑星)」はギリシャ語の「πλανήτης(planítis、さまよう旅人)」から派生した言葉。今なら天文学の専門家が「目の錯覚だよ!」ってすぐ教えてくれるけど、昔は天動説に歯向かったら死刑なんで、滅多なことは言えません。

いったん通り過ぎた星が戻ってくるなんて決して「あってはならない」こと。なんとか辻褄を合わせようとトンデモ科学が諸説出回ってたみたいですよ?

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歯車のコンピュータモデル
Image: UCL

そんな世界で星の運行を読む道具なんてどうつくるの!?

天動説の世界で星の動きを当てる機械なんてできるわけないと思っちゃいますが、Fragments AとDのパーツを検分してみたら金星の運行にピタッと一致しているではないですか。金星の「462年周期を見事に再現していた。再現するうえで63歯の歯車が重要な役目を果たしていることがわかった」と博士課程の共著者David Higgonさんは論文で述べています。

チームでは古代ギリシャの公式で残りの惑星の周期を求め、これを「物証が示すスペックに従い、超小型なメカニズムに組み入れていった」のです。

もちろん、天動説の宇宙観で設計するので無駄に骨が折れます。惑星が回るという前提だったら同心円状に太陽の周りをビーズを一方通行で回せば済む話なんですが…。行ったり来たりするのも入れなきゃならなくて、それが起こる時期に夜空のどこに輝くかの位置も再現しなきゃなりません。この気の遠くなるような作業を5つの惑星ごとにやるんです。なんかもう考えるだけで発狂しそう!

計算をもとに、デジタルで再現したのが上のマシンというわけですね。「全惑星の動きを示す画期的メカニズムであり、高度な天体の周期も計算できます。与えられたスペースは狭く、そこに収まるよう歯車の数は最小限に抑えました」と語るFreeth名誉教授。そのスペースは「深さ25mm未満」という狭いものでした。ひゃ~。

モデル再現の苦労をまとめた30分のドキュメンタリーはVimeoで視聴できます。動作はあくまでもシミュレーションであり、「古代の技術で製造できることを実証する」大仕事はまだこれからです。「解を表示する入れ子のチューブが一番の難モノだ」とWojcikさんは話しています。

町工場もない古代。こんなちっちゃな穴や歯をどう寸分の狂いもなく削ったのか。失われたテクノロジーを遡る旅は続きます。

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科学&テクノロジー

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