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Wednesday, February 19, 2020

アップル「Apple Card」本当のねらい(アスキー) - Yahoo!ニュース

Apple Payの年間取り扱い件数は年間150億件。2025年までに世界のカード取引件数の10%を占めるようになるという予測もある。アップルがApple Cardを作るのは、あらゆる人をApple Payエコシステムに引き込むのが本当のねらいだ。

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 Apple Payはサービス部門に属するアップルの主要ビジネスの1つになりました。Tim Cook CEOは直近2020年第1四半期決算の電話会議で、年間の取扱件数は150億件ペースに上り、2019年10~12月期は前年に比べて2倍以上に増加していることも明らかにしました。
 
 そのApple Payですが、日本企業が買収した英語のニュース媒体、Quartzは2月11日の記事で「2025年までにApple Payは世界のクレジットカード総取引件数の10%を占めるようになる」との調査会社Bernsteinの予測を紹介しました。
 
 意外なほど「Apple Card」と「Apple Pay」を取り違えて記事を読んでいた人が少なくありませんでした。しかしアップルにとって、これはうれしい誤算かもしれません。どうも、アップルが発行するあのチタンカードが、世界の取引件数のシェア1割を取る、と読み取った人が多かったからです。
 
 一度整理しておきましょう。
 
「Apple Pay」:手持ちのクレジットカード、銀行のデビットカード、(日本の場合、Suica)をiPhoneやApple Watchに読み込ませて、生体認証を用いてNFCに読み込んだトークンによって非接触決済を実現する。
 
「Apple Card」:2019年8月に発行が始まったアップルが発行するクレジットカード。iPhoneのWalletアプリ内で発行することができ、すぐにApple Payに設定して利用可能になる。オプションでチタンカードを無料で入手可能。パートナーはゴールドマンサックスとマスターカード。
 
●利便性とセキュリティのApple Pay
 米国でサービス開始時にApple Payを利用しようとすると、アメリカンエクスプレス、マスターカード、ビザ、ディスカバーといった主要ネットワークのカードを端末内に入れることができます。
 
 グーグルとともにNFCを用いた安全なカード決済の啓蒙をしており、ついにはカード業界も、EMVといわれるクレジットカードに備わったICチップでの決済を標準とするなど、米国のクレジットカード全体の安全性が高まりました。
 
 ユーザーのメリットはひとえにセキュリティ。それまで6ヵ月に1度はスキミングの被害に遭ってカードを再発行する米国生活を送っていた筆者は、Apple Pay導入以来、再発行の必要がなくなりました。もっともApple Payを導入する安全な店を選ぶようになった、というバイアスもかかったはずですが。
 
 事情が違っていたのは日本です。
 
 すでにiD、QUICPay、そしてSuicaをはじめとする交通系ICカードによって非接触決済が実現され、コンビニや駅の施設などを中心に、全国規模で普及していました。そこでアップルは日本向けのiPhone 7からFeliCaチップを入れて前述の3つの決済に対応。むしろApple Pay側が日本のFeliCaインフラをそのまま活用できるようにしました。iPhone 8以降はすべてのモデルでNFC-F(FeliCa)をサポートしています。
 
 そのため、世界中からiPhoneを持ってやってくる人々は、東京で鉄道に乗れたり、コンビニでお買い物をSuicaでこなせるはずなのですが、iPhoneの国設定を日本にしないとSuicaカード追加の画面が出てこないため、その利便性を早期に変更した方が良いかと思います。
 
●Apple Cardでチタンカードの出番は少ない
 真っ白なチタン製クレジットカードが象徴的なApple Card。
 
 金属製カードはこれまでもありましたが、5~10万、あるいはそれ以上の年会費を払う上級カードのステイタスそのものでした。持っていること自体に意味があり、金属カードのサービスを駆使するライフスタイルそのものを象徴するかのようです。
 
 しかしApple Cardのチタンカードには、何でも取りあえずお願いできるコンシェルジュサービスもなければ、何のステイタス感もありません。いや、そのうちSiriがより賢くなったら分かりませんが。
 
 そもそも、Apple Cardは年会費も無料です。ステータスアイコンではなく、完全に異なるロジックで、金属カードを採用していることが分かります。
 
 Apple Cardは報じられているとおり、クレジットカード番号や有効期限、セキュリティコードなどは刻印されておらず、全てiPhoneのWalletアプリの中で確認します。カード番号がスキミングされたと分かったら、新しいカード番号をリクエストして、不正利用を食い止めることもできます。
 
 つまり、カード番号と物理的なカードを紐付けてしまうと、Walletアプリでのコントロール性が損なわれるため、分離。結果として、物理カードを再発行しなくても、カード番号を再発行できるようになりました。
 
 となると、発行される物理カードは、数年おきに再発行されるプラスティックカードよりも大幅に長い年数使われることが想定されます。そこで割れない金属カードを採用し、再発行の事務手続きをほぼなくすコストカットをした、とみています。
 
 Apple Cardにおける金属カードの採用は、ステータスではなく長持ち素材を採用しただけでした。
 
 ですが、実はこのチタンカードの出番はほとんどありません。筆者が利用するのはせいぜい、ホテルにチェックインするときのセキュリティデポジットで100ドル預けるときに使うぐらいです。それぐらい、米国の主要な小売店や空港、カフェなどではApple Payの利用範囲が拡がっている、ということです。
 
●Apple Cardの存在理由
 アップルはApple Payを「世界標準的な決済手段」に持ち上げようとしています。
 
 決済額のわずかな部分がアップルに手数料として入ってくる仕組みで、その収入は少なくありません。前述の通り、年間150億回決済されており、例えば1回あたりの手数料が1セントでも、1億5000万ドルの手数料になるからです。
 
 そのため、アップルはすでに22カ国でApple Payを展開しており、決済回数が大幅に増やせる日本市場で、ハードウェア面から対応をしてきました。各国でも銀行やカード会社との提携を進めており、既存のカード利用社がすぐに手元のクレジットカードとiPhoneでApple Payを設定できるインターフェイスを準備しました。
 
 Apple Cardは、Apple Pay普及の第二段、と考えられます。というのも、Apple Cardは、iPhoneだけでクレジットカード口座が作れて、iPhoneですぐ使い始められる仕組み。時間的な意味でも、操作的な意味でも、非常にハードルが低いのです。
 
 加えてもう一つ低いハードルは、クレジットスコアです。Apple Cardは現在、米国の社会保障番号と免許証さえあれば、どんなクレジットスコアの人でもカードが発行されます。一般的なカードは信用度でカード発行の審査をしますが、Apple Cardは通常審査から落ちるスコアの人でも低い限度額設定でカードが発行されます。
 
 クレジットスコアは、クレジットカードやローンの口座を作り、信用枠を利用しなければ上がっていきません。にもかかわらず、低いスコアの人はクレジットカードが作れないという矛盾があります。大学のキャンパスでの勧誘活動に制限が加わったことも関係し、特に現在の米国の若い世代はクレジットカード離れが進んでいます。
 
 つまり、Apple Cardは現在クレジットカードを持っていない、作れない人のためのサービスであって、彼らをApple Payのエコシステムに引き込み、同時にクレジットスコアを付けてもらうことで将来的により多くの決済をする消費者に育てていこうというアイディアが透けて見えます。
 
 
筆者紹介――松村太郎
 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
 
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
 

文● 松村太郎 @taromatsumura 編集● ASCII

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