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Thursday, February 27, 2020

3つの“あるある”で解き明かす、SSD「本当の話」 - @IT

SSDに対する思い込みのせいで、損をしている!?

 デジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドを背景に、ビジネスを支えるITインフラには一層のスピードと効率が求められている。だが、その重要性を認識していながら、予算やスキルなどの事情でインフラ改善に乗り出せずにいる企業は非常に多い。

 それは@IT編集部の読者調査「TechnoGraphics 2019」にも表れている。例えば、多くの企業で導入されている「サーバ仮想化導入後の課題」においては「システムのパフォーマンス(担保が難しい)」が28.8%で第1位。また、「運用管理で最も重視している課題」は「コスト削減」が25.7%で第1位となっている。こうした傾向は、「仮想化によるサーバ統合」に取り組む企業が増え始めた約10年前から変わっていない。すなわち、多くの企業がインフラ運用のパフォーマンス向上、コスト削減で悩み続けていると言えるのだ。

 では、パフォーマンス向上とコスト削減の課題を解決するにはどうすればよいのか。その最もシンプルかつ効果的な解決策の一つが、ITインフラを構成するハードウェアを更新することだ。具体的には、サーバやストレージに搭載しているHDDをSSDに更新する。それだけで大抵の場合パフォーマンスを向上できる。一方でコストはどうだろうか? 「SSDは高い」という考えから導入を見送っている企業が多いのではないだろうか。

 そのように考えてしまう要因を探ってみると、「SSDに関するある種の思い込み」があったり、「情報が古いだけ」だったりするケースが多いようだ。もし本当にそうした理由だけで“本来得られるメリット”を見送ってしまっているのだとしたら、実にもったいない話だ。先行してSSDを導入した企業と比較すれば、ビジネスを支えるITインフラとして後れを取っているともいえる。しかし、多忙な日々の中でSSDの最新情報をチェックする時間も確保しづらいのではないだろうか。

 そこで本稿では、SSDに関する思い込み「3つのあるある」をピックアップ。NECグループの3人のプロフェッショナルにインタビューすることで、「SSD、本当の話」をいまあらためて整理してみた。

「SSDあるある」その1――「SSDは高い」

 SSDに関する思い込み「3つのあるある」、1つ目は「価格」だ。「SSDはHDDと比較して高く、特に中小規模環境では現実的ではない」と判断されることがある。NECの山口猛雄氏は、この点について「ドライブ単位の導入コストではなく、筐体やラック単位でのトータルコストを見ることが大事」と指摘する。

NEC パートナー・ソリューション営業本部 エキスパート 山口猛雄氏

 「SSD単体の価格を見て『高い』と判断されがちです。しかしSSDは大容量化が進んでいるため、単体のコストは高く見えますが、ギガバイト(GB)単価となるとHDDとほとんど差がなくなりつつあります。さらに、容量効率、性能、可用性も加えた3つを軸で比較計算すると、実際はSSDの方がコストパフォーマンスの良いケースが多いのです」(山口氏)

 山口氏は、お客さまが抱える課題を直接聞いた上で、可能な限り定量的に効果を示し、課題の解消を図っていると言う。

 「例えば、性能も出したいが、RAID構成で可用性も高めたいという場合があるとします。性能を出すためにはRAID 1の構成が最も一般的ですが、それでは容量効率や可用性を上げることができません。そこで高性能なSSDでRAID 6にすると性能、容量効率、可用性の3つを同時に向上できることになります。これまでは、性能重視ならRAID 1、可用性重視ならRAID 6と使い分けていたお客さまもいましたが、近年は『SSDでRAID 6構成を』と指定をいただくケースが増えています」(山口氏)

 さらに運用を含めたトータルコストを見てみよう。

 まず、一般に性能を出すためには多くのHDDを並列に動作させる構成を採ります。一方、SSDの構成では、SSDそのものが高性能のため、HDDと比べて大幅に少ないドライブ数で必要な性能を提供できるので、ラック搭載スペース、消費電力を削減できる。さらに、故障が少ないため、運用管理そのものの負荷が下がるだけでなく、ディスクの交換回数も減る。その結果、フィールドエンジニア(FE)やサポートエンジニア(CE)の交換作業時に運用管理者が立ち会う回数が減り、時間も削減できる。例えば、HDDの場合で毎月1回、5年で60回交換作業が発生していたとする。SSDの交換率は5分の1以下だとすると、5年で12回、さらに高性能化によりディスク台数が10分の1とすると、計算上では5年で1回もしくは2回の交換で済む、ということになる。このように、SSDは運用コストが下がることに加え、運用管理者の人的な負担/コストを下げることにもつながる。この点はSSDの2つ目のあるあるに関連するので、次はそれを見ていこう。

「SSDあるある」その2――「SSDは寿命が不安だ」

 SSDはデータの書き換え回数に制限があり、書き込みが増えるほど劣化していく。これはSSDの構造上は正しいのだが、利用している間にその寿命に達して使えなくなることはないという。SSDに関して技術面を担当しているNECプラットフォームズの萩原博之氏は次のように話す。

 「エンタープライズ向けシステムは基本的に5〜7年間利用するので、その間にSSDが寿命に達することが無いようにシステムの設計段階から考慮しています。実際、NECでは2013年に国内では他社に先駆けてメインフレーム向けストレージにSSDを採用し、お客さまに提供していますが、これまでの7年間でSSDが寿命に達したというケースは1件もありません。SSDは記憶セルの構造や動作、書き換えの仕組みなどが日々進化しています。現在は、SSDの寿命を不安に思う必要はまったくありません」

 「さらに『iStorage Mシリーズ』では、念には念を入れてSSDの寿命を監視する機能を持たせており、寿命近くになるとアラートを上げて交換を促すことも可能にしています。そして万が一、寿命に達した場合でも、保守契約をしていれば基本的には保守で交換いたしますので、安心して使っていただくことが可能です」(萩原氏)

NECプラットフォームズ ITプロダクツ事業部 第一ストレージグループ マネージャー 萩原博之氏

 SSDは、1つのセルに1ビットの情報を記録するSLC(シングルレベルセル)から始まり、その後、1つのセルに複数ビットの情報を記録するMLC(マルチレベルセル)やTLC(トリプルレベルセル)が登場した。萩原氏は、「SSDの寿命は、SLCとMLC、TLCを比較する中で、SLCに比べてMLCやTLCは寿命が短い(書き換え可能な回数が少ない)ことが注目され、それがイメージとして定着してしまったのではないか」と推測する。だが、現在は書き込みの仕組みを改善することで、書き換え回数は実運用上問題の無いレベルとなっている。今後はQLC(クアッドレベルセル)など、さらなる大容量化も進んでいる。

 「最近は、寿命よりもSSDのI/O性能が安定していることや故障率が低いことに注目するお客さまが増えています。HDDは“匠の技術”ででき上がっているものとはいえ、可動部があり、経年による消耗で障害発生率が上がることもあります。SSDには可動部が無いので、むしろ安心して利用し続けることができると評価されるケースが多いのです」(萩原氏)

 山口氏も、SSDの寿命について顧客へ定量的に説明しているという。

 「SSDには、製品保証期間まで使い続けるために、一日に書き込めるデータ容量の目安があります。この目安を用いて、例えば、お客さま環境で、書き込み性能のピーク値を出し続けた状態で”いつ“寿命に達するかを計算します。3年で寿命に達するという数値が出たとしても、実際にはお客さまの実環境における書き込み量の平均値はピーク性能で書き込む量の2〜3割、まれなケースでも5割程度です。この5割の書き込みが発生した場合で6年、平均的な2〜3割なら10年ほどは寿命に達しないということになります。このように定量的に説明すると、ほとんどの方に納得いただけます」(山口氏)

「SSDあるある」その3――「メリットは、スピードと信頼性“だけ”?」

 SSDは、HDDと同等の可用性のもと、高いパフォーマンスを発揮できる点が魅力だ。また、ディスク自体の故障率が低く、I/O性能も安定しているなど、システムとしての高い信頼性を持つ。しかし「メリットはスピードと信頼性だけ」という思い込みもよく見受けられる。山口氏は「ストレージ設計が容易になることも大きなメリットです」と解説する。

 「HDDで構成する場合、必要な性能を実現するには最適な種類のHDD、RAIDタイプを選択し、データの配置場所を考慮する必要があります。さらに、実際には性能要件が異なるデータが複数あるため、管理者は、配置場所を分けたり、負荷分散を効率的に行うためにストレージのボリュームの設計を変更したりするなど、性能を出すための工夫やきめ細かな設計が必要です。しかし、SSDなら性能が大幅に向上しているため、こうした考慮が不要となり、ストレージ設計が容易になるのです」(山口氏)

NEC クラウドプラットフォーム事業部 第二ソリューション基盤統括部 マネージャー 白井学氏

 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品である、「NEC Hyper Converged System」を担当している白井学氏は、「システム設計が容易になり、システムを運用する際に柔軟性が増すことも大きなメリットです」と話す。

 「HCIの分野では、SSDを使ったオールフラッシュ構成が中心になりつつあります。HCIの用途としてはサーバ仮想化や仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)が多いのですが、SSDにすることで、ログオン時間を短縮したり、レスポンス時間を短くしたりすることができます。I/O性能が安定していることもあり、データ配置によりシステムが遅くなりにくいこともメリットです」(白井氏)

 それらに加え、「重複排除によって容量効率を高められる」など、コスト効率、運用効率ともに向上させるさまざまなメリットがある。白井氏は、「SSDを組み入れることでHCIのメリットはさらに際立つのです」と話す。

ファイルサーバ、ストレージ、HCIにおけるSSDで実際に得られる多大なメリット

 事例も豊富だ。例えばファイルサーバの場合、ストレージに大容量SSDを採用することで、容量効率向上とコスト削減を図れるのはもちろん、大幅な性能向上も実現できる。

 「あるお客さまは、200TBのファイルサーバを1万5000回転の600GB HDDを使ってRAID 6構成で組んでいました。SSDは大容量化が進んでいます。そこで15.3TBのSSDに集約することにしました。すると、性能が向上しただけではなく、ドライブ数が減ることから筐体数を減らすことができ、消費電力も減り、バックアップ時間も短くなるなど、非常に高い効果を上げることができたのです」(山口氏)

200TB構成時のHDDとSSDの比較

 また、NECはHCI製品として認証デバイスを組み合わせて構成する「NEC HCI」とアプライアンスタイプの「NEC Hyper Converged System(HCS)」をラインアップにそろえている。前者のNEC HCIは要望に応じてカスタマイズが可能であるなど「導入の柔軟性」を、後者のHCSは「便利さ/シンプルさ」を重視した製品であり、さまざまな企業ニーズに対応している。

NEC HCIとHCS

 そして、HCSでもオールSSDモデルが採用される事例が増えている。あるお客さまは、基幹システムとVDIを同時更新することになり、予算確保に悩んでいた。だが、HCSのオールSSDモデルを採用し、2つのシステムを同一基盤に実装することでコスト最適化を図り、システム更新を実現することが可能となった。

 基幹システムでは高いSLA(サービスレベル契約)が求められるが、VDIではコストパフォーマンスが重視される。これらの相反するニーズをHCSのオールSSDモデルでは、SSDの安定した性能/耐障害性に加え、同モデルで利用できるイレージャコーディング機能/重複排除機能を用いて容量効率を高めることにより、実現したのである。

基幹システムやVDIシステムにおけるSSDの採用理由

 「HCSでは、ドライブ交換でも運用管理者に代わってCEが管理ツールの操作を行うなど、運用管理者の負担を軽減できるサポートサービスを提供しています。HCIに限らず、運用管理者の負担を低減しつつ、SSDのメリットを最大限享受できるよう、さまざまな配慮をしていることが弊社の強みの一つだと考えます」(白井氏)

各社各様の課題に寄り添い、最適な構成を「定量的に」示す

 以上のように、SSDはITインフラのパフォーマンス向上や運用効率を含めたコスト削減へ大幅に寄与する。もちろんSSD単体の価格も下がっているが、前述のように、イニシャルコストだけで考えるのではなく、その後の運用を含めたトータルコストで考えると、HDDより大幅に効率的かつ合理的であることが理解しやすいはずだ。

 とはいえ、SSDのメリットを理解していても、いざ本格的に導入しようとなると、“決済承認者の説得”や“自社特有のニーズ”などが壁となって立ちはだかることも多い。その点、NECの強みは、多様なユーザーニーズに応じて、アセスメントやコンサルティング、保守やサポートなどをトータルで提供できることにある。

 「例えばSSDの導入については、アセスメントツールがあり、既存のHDDで構成したシステムをSSDに移行することで、どのくらいパフォーマンスが出るのか、どのくらいの予算で実現できるかを、定量的にお客さまに提示することができます。これを基に、お客さまの環境やニーズに最適な構成と期待できる成果を定量的に提案していきます。“具体的な数字”で効果を確認できるため、導入判断がしやすくなるなど、稟議(りんぎ)書向けの資料としても使っていただけます」(山口氏)

 さらにさまざまなニーズに応じることもできる。「例えばストレージにおいて、『予算の事情で基本的にはHDDを使いたいが、アクセス集中時の性能低下は回避したい、ピーク性能をある程度維持したい』といったニーズも少なくありません。そうした場合には、SSDを2次キャッシュとして使い、HDDへのアクセスを減らすことでシステム全体の性能を維持する、といったソリューションを提供できます。また、SSDとエンタープライズHDDとニアラインHDDが混在した構成でデータの最適配置を行うソリューションもあります」(萩原氏)

 こうした対応は、長年のシステムインテグレーション案件を通じて“国内企業の事情や悩み”を知り尽くしているNECならではといえるだろう。なお、山口氏、萩原氏、白井氏が所属する部門は、プラットフォームのモダナイゼーションを行うことで顧客を支援することをミッションに掲げている。3人は「お客さまそれぞれの課題や悩みを真摯(しんし)にうかがい、常に最適な提案、高品質な製品を提供することで、運用管理負荷を低減し、DXに向けたより本来的な業務に集中できるよう環境整備を支援していきたい」と異口同音に語る。

 今回振り返ったような“SSDに関する思い込み「3つのあるある」”から、導入にちゅうちょしてきた方は、まず最寄りのNECに声を掛けてみてはいかがだろう。山口氏が語った「アセスメントツールを使った定量的な回答」に、課題解決の思わぬ糸口を発見できるはずだ。

 本記事で紹介したサーバ・ストレージ製品は、2020年4月8日から10日まで開催される「Japan IT Week データセンター&ストレージEXPO【春】」にて展示を予定している。フラッシュをはじめとしたさまざまな製品の展示、デモ、ミニセミナーが行われるので、足を運んでみてはいかがだろうか。

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