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Tuesday, February 25, 2020

路上にこそ、本当のアメリカがある こんな旅ガイダンス(第3回) - JBpress

文=櫻井 卓 写真=飯坂 大

街から抜け出し、荒野を駆け抜ける快感

 ヨセミテをはじめ、アメリカの国立公園は、その道中も楽しみのひとつだ。特にちょっとでも運転が好きな人であればなおさら。だから僕は、ヨセミテに行く時はだいたいロサンゼルスから入る。距離的にはサンフランシスコのほうが近いんだけど、あえて1泊2日かけてのんびり行くのだ。

ロサンゼルスからちょっと北上するとこの景色。片側4車線がどこまでも続く

 LAX(ロサンゼルス国際空港)でレンタカーをピックアップしたら、一目散に街から抜け出し、北へと向かう。よく「アメリカでのクルマの運転って難しくない?」と聞かれたりするけど、首都高のほうがはるかに難易度が高いし、ハイウェイでビューッと1時間ほど北上してしまえば、交通量はガクンと減る。アメリカ特有の広い道幅の道路を、気持ち良くドライブできるのだ。

 ロサンゼルスから北へ1時間。そこにはだだっ広い荒野が広がっている。人工物もどんどん減ってきて、たまにガスステーションやマクドナルドの看板がハイウェイ脇に出てくるくらいだ。アメリカは日本と違って、サービスエリア的なものはほとんどない。休憩するときは1度ハイウェイを下りて、ガスステーションなどに寄ることになる。

ハイウェイから離れると、タイムスリップしたかのような雑貨店に出会うことも

 アメリカのハイウェイはどこまで行っても、タダ。その気になれば全米1周だってできる。だからロードトリップという文化が根付いている。ギラギラ照りつける太陽の下、クルマを飛ばせば、いつか観たロードトリップの主人公になったような気分を味わえる。巨大な風車、石油を汲み上げる、まるで怪物のような機械、広大な農場、放牧された牛。そんなものを横目に見ながら、時速約100マイルで動き続ける。

寄り道こそが、ロードトリップの醍醐味

 1日目はだいたい、途中の街のモーテルに泊まる。そういえばこのモーテルというものも、アメリカのモータリゼーションを象徴するもののひとつだ。最近では画一化されたチェーン店も多いけど、まだまだ地元に根付いたものも多く、そういう昔ながらのモーテルは、部屋の前にクルマを駐車するタイプ。日本のホテルなんかに比べたら、けっして清潔とは言えないし、ドアを開けた途端、消臭剤の強烈な匂いに襲われることも多い。けど、その瞬間に「ああ、アメリカに来たのだな」と、実感するのだ。

ヨセミテへの玄関口。フレズノという街の朝焼け

 翌日は東へ向かう。途中で、スモールタウンに立ち寄って、メキシカンを食べるのも、いつもの習慣だ。「アメリカは飯が不味い!」というのは、良く言われるけど、ことカリフォルニアにおいては、メキシカンを選んでおけば大ハズシすることはまずない。狙うは個人店。お通し的に、最初に出てくる自家製サルサが美味しければ、もう勝ったも同然。間違いなく良い店だ。ヨセミテがあるハイシエラの山々の懐に入っていくと、それまでのグレートプレーンズの風景から一変して、白い花崗岩と巨木の世界になる。日本のように急斜面ではないので、ゆるやかなワインディングを気持ちの良い速度域で走り抜ける時の爽快さは、一度味わってしまうと病みつきになるのだ。

ヨセミテ国立公園の入口に到着。何度来てもワクワクする風景

 飛行機で最寄りの空港まで行けば、もっと速いし、簡単だ。けど、アメリカのことを深く知りたいなら、路上を行くべきだ。自分で走ってみることで、初めてアメリカの広大さを実感できるし、そこにある暮らしこそがリアルなアメリカだ。

 いつかは、スモールタウンを巡りながら、クルマで全米を回ってみたい。移動が手段で終わらず、目的として成立する地。そんな場所は、日本で探しても見つからない。

ヨセミテで出会った年季の入ったRV仕様のバナゴン。こういうので旅してみたいなぁ

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