『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、ポケモンSV)の世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」ゲーム部門にて、ある選手が失格になったことを報告し注目を集めている。同選手の使用ポケモンのうち半数には、不正に入手したポケモンが含まれていたという。なお選手はそれらのポケモンを「信頼できるトレーダーから入手した」と主張している。
「ポケモンワールドチャンピオンシップス」(以下、WCS)はポケモン関連作品のさまざまな世界大会がおこなわれるイベントだ。今年のWCSでは『ポケットモンスター』(以下、ポケモン)シリーズ最新作『ポケモンSV』のほか、「ポケモンカードゲーム」や『ポケモンユナイト』『ポケモン GO』といった作品の世界大会が開催。また今年は日本が初めて開催国として選ばれ、「パシフィコ横浜」が会場となっている。開催期間は8月8日から8月14日まで。
今回、WCS 2023にて実施されている『ポケモンSV』世界大会に出場していた選手Brady Smith氏が失格となったことを報告し、注目を集めている。Smith氏は、自分の使用ポケモンのうち半数が不正に入手されたポケモンであったと明かしている。
Smith氏によると、同氏の使用ポケモンのうち半数は「modified/genned」ポケモンであったという。つまり不正なツールによって、生成(ganerate)あるいは改造(modify)されたポケモンが含まれていたと見られる。同氏はランドロスを入手するための『ポケモンレジェンズ アルセウス』、およびウーラオスを入手するための『ポケットモンスター ソード・シールド』を所持していなかったと説明。そのため同氏は(大会のために)評判の良いトレーダーからポケモンを交換して入手したと主張しており、それらが大会運営側から不正なポケモンと判断されたことを伝えている。
なおWCS 2023への出場権は、世界各国・各地区の大会での上位入賞者に与えられる。そのためSmith氏も拠点である米国の「Pokémon North America International Championships(NAIC)」に出場していたと見られ、その際にも同様のパーティを使用していたようだ。そのためSmith氏は今回の大会側の判断に納得する姿勢を示しつつも、WCS 2023出場後にようやく不正なポケモンが発覚したことを奇妙に感じるといったコメントも述べている。
またそのほかにもWCS 2023にて不正なポケモンを使用し、失格となった選手は見られる。イタリアを拠点とする選手Roberto Parente氏も本大会で失格となったことを報告。同氏も予選となる現地の大会では使用ポケモンたちが不正と発覚することはなかったようで、WCS 2023でのチェックで不正と見なされた点に不服を述べている。
一方でParente氏には「不正行為だから自業自得」といった厳しい批判も多く寄せられている。Parente氏はそうした意見に反論し、「みんな今までの大会では不正なツールを用いてポケモンを用意していた」と主張。今回の大会でも失格になっていないだけで、ほかにも不正なポケモンを使っている選手はいるとの見解を述べている。
なお前述のSmith氏もKotakuの取材に対し、WCS 2023への出場選手かどうかは定かではないものの、「努力値(EVs)を改ざんして不正な育成をしたポケモンを使用し、大会側にバレなかった選手を個人的に何人か知っている」と述べたそうだ。つまり競技シーンではバレていない不正行為も一部で横行しているのだろう。またSmith氏いわく“信頼できるトレーダー”であっても、不正に入手したポケモンを流通させている状況もあるようだ。
昨今の『ポケモン』シリーズ作品では、ポケモンの厳選や育成が比較的容易になる仕組みが複数導入されてきた。対人戦のハードルが高かった過去作品と比べると、パーティの準備が飛躍的に容易になったといえる。一方で特定の作品や期間限定イベントでのみ入手できるポケモンも複数存在し、妥協の一切ないパーティを準備するためにはシリーズを跨いで厳選や育成をおこなう必要性が生じる場合もある。
Smith氏やParente氏の主張が正しければ、そうした手間を省くために不正に走る選手も一部存在するようだ。もちろん不正なツールを用いることは大会どころかオンライン対戦においてもレギュレーション違反であり、あるまじき行為だ。パーティを準備する手間も、戦いを勝ち進めるために必要な努力として想定されている部分と考えられる。
ただ不正行為がもし一部選手にとって常態化しているのであれば、公平性を欠く側面もある。Smith氏もParente氏も、不正なポケモンを含むパーティを使っていても各国の大会で失格になることなくWCS 2023まで勝ち進んだようであり、世界大会の予選段階で不正者が見逃されてしまった点は問題といえる。各国の大会で一貫して不正を発見できる仕組みの導入が求められているところだろう。
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