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Wednesday, June 8, 2022

ようこそ鳥居流“8Kゲーミングシアター”へ。ゲーミングPCとヘッドセットが活躍 - AV Watch

筆者は映画やアニメが大好きで、現在住む家もホームシアターのために建てたと言っても過言ではない「映画館付き一戸建て」の完成以来、理想とするホームシアターの実現に力を注いできた。最近では、ビクターの8Kプロジェクター「DLA-V90R」を導入し、レーザー光源採用による高コントラストと豊かな色、8K表示の精細さで、映画にぐっと迫ったかのような鑑賞体験ができるようになっている。

部屋の後方に設置している、ビクター DLA-V90R。見た目としては前作とほとんど変わっていないが、光源はレーザーとなり、8K表示も「8K e-shift X」となるなど、大きく変わっている

もちろん、せっかくの8K映像の入力にも対応しているのだから、YouTubeの8K動画を楽しむために8K出力ができるパソコンも新規に導入。リアル8K映像の素晴らしさに圧倒された。

8K出力ができるパソコン

自宅で使用するディスプレイもブラウン管テレビからハイビジョンテレビ、フルHDテレビ、4Kテレビ、4Kプロジェクターと変わっていったが、8Kプロジェクターが一番インパクトがあった。フルHDテレビまでは高精細化、高コントラスト化に感激する一方で、階調性や色再現の制約、擬似輪郭などのノイズや信号処理による不自然さが気になった。4KテレビやHDR規格の登場で階調性や色再現も向上したし、擬似輪郭などもずいぶん気にならなくなった。だが、8K映像はそれらとは次元の違う驚きがあった。NHKでは「本物感」という言葉を使っていたと思うが、肉眼で見たときの感動に近いものが伝わるような気がするのだ。

例えば、YouTubeの8K動画では優れた映像を数多く公開されているが、その映像の多くはドキュメンタリー作品的なもので、精細で色鮮やか。ディスプレイの性能を示すデモ映像として使われるようなものが多い。そうした映像はもちろん優れた映像なのだが、色の彩度を高めすぎた感じや綺麗すぎて逆にリアリティがないものもあった。

だが、8Kのそうした映像は色の彩度を強めた撮り方のものでも、こんな極彩色の鳥や虫も実際に居るのだろうという説得力がある。これは、色再現範囲が広いことで、鮮やかな色だけでなく陰影も出るし、昆虫や鳥の関節や足の複雑な構造まで鮮明に見ることができ、自然に生きるものなら当然の土や埃のような汚れまで再現されているためだ。このような緻密な再現ができるのも8Kの解像度の高さゆえ。機会があればぜひとも体験してみてほしい。

なお、パソコンでの8K/60p出力では、HDMIケーブルもきちんと転送速度48Gbpsに対応したものを使うことが必要だ。特にパソコン側でRGB 12bit出力をしようとすると、途端に不具合が出るものもある。よく調べたら、HDMI2.0時代のもので、製品としても規格上は18Gbps。実測値で24Gbpsの性能を持つケーブルだった。現在はHDMI2.1規格の認証もメタル線、光伝送ともにきちんと行なわれているので、しっかりと認証されたケーブルを選ぶのが重要。

パソコンと薄型テレビやプロジェクターの接続では表示がうまくいかないこともあるが、そんな時はまずHDMIケーブルを確認しよう。そして、無事に8K/60p表示ができて驚くのが、文字は相当に小さくなること。120インチのスクリーンに表示していても、画面全体を自然に見渡せる2.5mほどの距離ではアイコンが小さすぎて読めないのだ。8K表示のデスクトップの広大さには驚かされるばかりだ。

筆者の視聴室でYouTubeの8K動画を表示したところ。映像の高精細さも素晴らしいが、アイコンや文字(200%拡大表示)が小さいことにも注目
ディスプレイ設定の画面。解像度は8K(7,680×4,320)でHDRもオンとしている。8Kではウインドウが小さくなりすぎるため200%に拡大している
8K表示のデスクトップ全体を等倍表示でキャプチャーしたもの。120インチでも視聴位置からでは文字がかなり読みづらくなる
ディスプレイの詳細設定。RGB出力で12bitとし、8K/60p出力としてはもっとも品質の高い出力としている。HDMI2.1対応のHDMIケーブルでないと帯域が不足して映像が伝送できないので注意

ところで筆者はゲームも好きだ。8K出力ができるパソコンは、いわゆる「ゲーミングPC」を選んだ。というのも、8K出力をするためには、最新かつ高性能なグラフィックボードが必要で、それらを備えるパソコンというとゲーミングPCになってしまうことが多い。筆者はマウスコンピュータのG-Tuneというブランドの「G-Tune PP-Z-3070Ti」というモデルをBTOオーダーで手に入れた。そこにゲーミングキーボードなどを組み合わせている。

ゲーミングキーボードというと、ど派手な7色のイルミネーションが印象的だが、ホームシアターでは必須と言っていい。なぜならキーボードが発光するので暗室でもキーボード操作が快適に行なえるのだ。もちろん、LEDの発光は緑など目に優しい色にし、照度も抑えているが。

すっかり他の機材に埋もれているが、購入したばかりの8K出力対応のパソコン「G-Tune PP-Z-3070Ti」。筐体のデザインがカッコイイので、先代のPC(4K出力対応機)も同系列のモデル

ここで、ふと気付く。8K/60pや4K/120pに対応する最新のレーザープロジェクターをディスプレイとし、そのためのPCやPS5も完備。これはもう、ホームシアターというより「ゲーミングシアター」なのではないかと。たしかに部屋を真っ暗にして、最新のPCゲームに興じていると、まさしくそのものという気になってしまう。自分はこれまでもホームシアター環境でゲームをしていたのでもはやこれが日常なのだが、一般的なゲーム好きから見るとちょっと異常かもしれない。というか、ホームシアターと最新ゲームの相性は極めて良い。映画や音楽のために立派なホームシアターをお持ちの人は、ぜひとも最新ゲームも体験してみてほしい。新たな世界の扉が開くこと間違いなしだ。

ところで、音響は? それが現在の一番の課題

ゲーミングシアターなどと言っておきながら、まだ重大な問題がある。音響だ。Blu-rayや動画配信などの視聴ならば、6.2.4ch構成のサラウンドシステムがある。しかし、そのためのAVアンプがHDMI2.1に非対応のため、音声を出力しようとしてAVアンプに入力すると、音は出ても映像がパススルー出力できない。AVアンプは現在のところまだ購入する予定がないため、パソコンやPS5でのゲームプレイ時の音声の再生方法を考える必要があるのだ。

ゲーミングキーボード、コントローラーとともにゲーミングヘッドフォンを並べたところ

そのために目を付けたのが、ゲーミングヘッドフォンだ。ゲーミングヘッドフォンならば、ゲームの音も迫力あるサウンドで楽しめるし、サラウンド音声に対応したものもある。というわけで、ゲーミングヘッドフォンで良さそうなものを探してみることにした。編集部にも相談してみると、バッチリの最新モデルがあるということで、さっそく借りる事に。それが、ウルトラゾーンの「METEOR ONE」(実売約2万5,180円)。

METEOR ONEは、ウルトラゾーンが新規に発売したワイヤレスイヤフォン3モデルのひとつ。着脱式のブームマイクを備えたBluetooth対応ワイヤレスヘッドフォンで、ドライバーは40mmマイラーダイナミックドライバーを搭載。そして、独自のS-Logicテクノロジーも採用する。こうした構成は、ノイズキャンセル機能付きモデルの「ISAR」と同様。ゲーム用とはいえなかなか本格的な作りだ。

Bluetooth接続で、コーデックはSBCとAACのみの対応となるが、遅延が気になるBluetooth接続でも低遅延でゲームプレイを可能にするため、「タクティカルモード」を搭載。なんと約30ミリ秒の低遅延を実現している。バッテリーは連続約15時間の再生が可能だ。

このほか、ブームマイク付きアナログ接続ケーブルが用意され、バッテリーが消耗した時でもゲームを続行でき、電源ボタンのダブルクリック操作でLEDのライトエフェクトを計7種類切り替えできる。

ウルトラゾーンの「METEOR ONE」。操作スイッチ類が赤いボタンとなっているのが特徴。ウルトラゾーンのロゴとハウジングの四角い部分はLEDで7色に点灯する
METEOR ONEに、着脱式のマイクを装着したところ。双方向設計のデュアルマイクでクリアな音声での通話が可能だ
有線接続用のアナログ接続ケーブルとマイク。こちらのマイクもワイヤレスタイプと同等の性能を備える

もう1つが、クリエイティブメディアの「SXFI THEATER」(実売約2万3,800円)。左右の耳の写真を撮影することで、個人のHRTF特性に最適化した疑似サラウンド再生が行える「Super X-Fi」技術を採用したワイヤレスヘッドフォンだ。さらにこのモデルは、付属のUSBドングルによって独自規格の低遅延ワイヤレス接続が可能。なんと最大8chのマルチチャンネル信号をワイヤレスで伝送できる。

SXFI THEATER(左)と、SXFI GAMER(右)。ヘッドフォン部分はほぼ同一でワイヤレスタイプと、USB接続タイプという違いがある兄弟モデルだ

ドライバーユニットは特別にチューニングされた50mm口径のドライバーで磁気回路にネオジウム磁石を採用。バッテリー寿命は連続約30時間となかなかの長時間再生が可能だ。そして、ゲーム用のマイクも着脱式のものが付属する。このほか、3.5mmステレオミニ端子も備えており、アナログ接続も可能となっている。

兄弟モデルとして、USB接続専用モデルの「SXFI GAMER」(実売約9,980円)もある。ヘッドフォン部分はほぼ共通でSuper X-Fi技術に対応するが、Super X-Fiの信号処理などはパソコン側にインストールするドライバー側で行なわれる。USB接続のため遅延の心配もなく、バッテリー切れの心配もないことが特徴だ。

SXFI THEATERのデザインは比較的シンプルなものだが、ハウジング周囲にLEDを内蔵しており、アプリでの設定によりさまざまな色で発光させることができる

実力はどちらもなかなかのもの。ゲームだけでなく、映画や音楽も楽しめる

まずは音の実力を確かめる。“ゲーム用だから音質などはドンシャリで迫力たっぷりに鳴れば良い”というわけにはいかない。筆者はただのゲーム好きだが、休日などにひとたび熱中すればそれこそ一日中ゲームをしてしまうし、そんな人は少なくないだろう。

しかし、10時間以上もヘッドフォンを装着し続けていると、案外耳の周辺が痛くなったり肩が凝ったりとゲームへの集中を妨げる。なにより、音質も耳に刺さるような刺激的な音だと、耳が疲れやすくなる。個人的な印象では装着感や重さよりも、音質の方がプレイに支障が出やすいと感じている。耳が疲れて音量を下げれば周囲の音で敵の存在を探るようなことも難しくなるし、プレイに集中できず、ひんぱんに休憩を挟むことが増えてしまう。

まずはウルトラゾーン「METEOR ONE」で音楽を聴いた。条件を揃えるため、どちらもゲーム用パソコンに「Audirvana 本(origin)」をインストールして再生。アナログ接続とワイヤレス接続の両方で聴いている。「森口博子/GUNDAM SONG COVERS 3」から「BEYOND THE TIME メビウスの宇宙を越えて」を聴くと、きめ細やかで情報量豊かな音が出た。

ボーカルは瑞々しい再現で、コーラスとして参加しているTMネットワークの3人の声もきちんとわかる。音の感触はややソフトに感じるがアタックが柔らかいというほどではない。ドラムスの打音もローエンドの深さも力強いし、軽快と言えるほど反応がいい。ステレオイメージもなかなか広大で、頭外定位というほどではないがステージが目の前に広がる感覚はある。空間の響きも豊かに出るのだが、そのわりに楽器の音はボーカルとコーラスが混濁するようなこともなく、実に見晴らしがいい。さすがはウルトラゾーンという感じだ。

「米津玄師/M八十七」は、ボーカルの力感と高い声の伸びもしっかりと出て、ニュアンスが実に豊かだ。情報量はかなり豊かなのだが、カリカリの高解像度な音にはならず、しなやかで優しい感触になるのも心地良い。この耳当たりのいい感触と情報量の豊かさが大きな魅力だ。Bluetoothのワイヤレス接続(コーデックはSBC)で聴くと、高域のきめ細やかさがやや乏しくなるなど、全体に情報量が落ちた感じはあるが、明らかに音質が劣化したような感じにはならず、心地良くニュアンスの豊かな音を楽しめる。

クリエイティブメディアの「SXFI THEATER」

続いてはSXFI THEATER。こちらもアナログ接続で森口博子の「BEYOND THE TIME メビウスの宇宙を越えて」を聴いた。低音がなかなかパワフルで、ドラムスの響きも力強いし、歌声もエネルギー感のある力強い歌唱になる。中高域はナチュラルで耳障りになるような歪み感もなく、しっかりとした実力はある。

仮想サラウンドの「SXFI」を聴くと、頭外定位のスピーカーで聴くような音場になる。2チャンネルソースではサラウンド効果を付加しているわけではなく、最適化されたHRTF特性に基づいたステレオ再生となるようで、余計な残響感の負荷などはない。耳に直接入ってきた音が、ある程度の距離感を持って耳に届く感じになるので、ヘッドフォンらしいダイレクト感はなくなり、初めて聴くと音が遠いと感じるほどだが、慣れてくると適切な空間感のあるステレオ音場と感じる。

特にMETEOR ONEと比べると情報量の豊かさではやや差を感じるので、もう少し声や楽器の音の細やかな質感が欲しいと感じるが、音場の広がりやステレオイメージの奥行き感ではSXFI THEATERが優る。

「米津玄氏師/M八十七」も、METEOR ONEと比べるとやや細かなニュアンスは差があるが、声の張りや力強さはしっかりと出る。SXFIの目の前に広がりステージ感はヘッドフォンとは思えない音場感がある。ワイヤレス接続で聴いても、情報量としての落差はほとんど気にならない。というのも最大8チャンネルのマルチ音声を伝送できる帯域があり、伝送時の信号圧縮なども行なっていないため。このあたりは独自のワイヤレス伝送の強みでもある。

こうして両者を聴いてみると、音楽も十分楽しめる実力があるとわかる。METEOR ONEは音色的に柔らかい感触、SXFI THEATERは空間感というか距離感のある音の伝わり方と、感触は異なるものの耳当たりの良さというか耳に優しい音になっているため、長時間使っていて耳が疲れるようなことはなかった。

また、装着感や軽さはどちらも良好だが、METEOR ONEは遮音性が良好で外部の音が気になりにくいのも良かった。METEOR ONEはクッションにメモリーフォーム材を使っているためより密着感が増し、遮音性に優れるようだ。イヤーパッドの表皮の材質はどちらもプロテインレザーで肌触りの良さは共通。どちらも長時間使用時の装着感、音質ともになかなか優秀だ。

特に両者の違いをピックアップするならば、声のニュアンスや楽器の質感など、音の細かなところまで聴き取るならばMETEOR ONEが優れる。SXFI THEATERはなんと言ってもサラウンド再生の空間表現に優れることが最大の魅力。きめ細やかな音質かサラウンド感か、どちらを優先するかで選ぶといいだろう。SXFI GAMERは音質的にほぼ同傾向でアナログ接続ならばほぼ同じ音と言える。有線専用となるとケーブルの取り回しが案外やっかいにはなるが、価格がかなり安価になるので、音質的なパフォーマンスはかなり高い。安価で音質の良いモデルとしてはおすすめだ。

サウンド設定。画像はUSBドングルで接続するSXFI THEATERのもの。METEOR ONEも外付けのBluetoothオーディオトランスミッターで接続しているので、ここでの見え方は同じ
サウンドのプロパティ。ここでは音声出力の品質(量子化ビット数/サンプリング周波数)や、立体音響が選べる。「Dolby Atmos for Headphone」は有償だが、パソコンで動画配信サービスなども利用するなら購入をおすすめする
スピーカーのセットアップ画面。SXFI THEATERでは7.1サラウンドが選択できるので、こちらで設定をしておく。METEOR ONEの場合はステレオのみとなる

8K/60pのゲーム体験を満喫、「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」をプレイ

映像そして音響の環境も揃ったことでいよいよ8Kゲームをプレイすることにしよう。PS5の4K/120pもヌルヌルと動く映像が実に見やすく、目が疲れるようなこともなく没頭してしまった。ハイフレームレートは長時間集中してプレイする人には欠かせないし、スコアを競うようなゲームではきっと結果にも大きく影響すると思う。

PS5で4K/120pは体験できたので、パソコンでは8K/60pを求めるのは当然。春先に大きな話題となった「エルデンリング」も気になったが、調べてみるとSteam版のグラフィックの解像度が4K(3,840×2,160)までで、フレームレートも60fpsが上限となっていることがわかって断念。そこで他の人気タイトルを探したところ、「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」(以下「DEATH STRANDING DC」)が候補に上がった。

「DEATH STRANDING」は、あの小島秀夫がKOJIMA PRODUCTIONとして制作したゲームの第1弾。分断されてしまった世界で、プレイヤーは配達員となって分断された地域や人々を繋いでいく物語だ。先行したPS4版よりもSteam版ではさらにグラフィックが強化され、PS5版も発売されたDIRECTOR'S CUTでは、Steam版でもハイフレーム対応、ウルトラワイドモニター対応などの強化が加わっている。もちろん、8K/60p表示にも対応するので、プレイしてみることにしたわけだ。

さて、プロジェクターに詳しい人は、DLA-V90Rの8K表示の実際が気になる人も多いと思う。DLA-V90Rは表示パネルは3,840×2,160画素の三板式で、パネルを上下左右に動かし、4倍速(240Hz)で駆動することで8K解像度を表示する「e-shift X」を採用している。なお、過去のモデルや下位モデルで採用されている「e-shift」はパネルを斜めに動かし、120Hz駆動することで8K相当の解像度を実現している。8K解像度のパネルを使っているわけではないので、画素が欠けたり潰れたりするようなこともなく、きちんと8K表示ができるのか? と疑問を持つ人もいるだろう。筆者も最初はそこが気になったので、そこで、スクリーンに投影された画面を接写して確認してみた。

手持ちのカメラでできる限りスクリーンに寄って画面を接写。画面表示は8K/60pだが、アイコンやウインドウ表示を200%の拡大表示としている
撮影した画面を1,920×1,080で切り出したもの。ややエッジが甘い感じではあるが、漢字などを見ても画素の欠けや潰れはないことがわかる

残念ながら手持ちのカメラでは極端な接写ができず、しかもリアル8K表示では文字がさらに小さくなるため、画素の欠けなどを確認できなかったので、アイコンやウインドウ表示は200%に拡大表示としている。その状態では、文字が潰れるようなこともなく、きちんと表示ができているとわかった。ちなみに肉眼で100%表示を実際に見て確認しても、画素が欠けるようなことはなかった。

4K/120p出力で、きちんと信号伝送ができているかを確認。プロジェクター側の情報表示で、「2160p 120A」となっており、RGB 12ビット出力、HDR出力などお問題なし
©2019-2020 Sony Interactive Entertainment Inc. DEATH STRANDING is a trademark of Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS. All trademarks are the property of their respective owners. PC version published by 505 Games. 505 Games and the 505 Games logo are registered trademarks of 505 Games S.P.A. Appearance in this game does not imply sponsorship or endorsement. © 2020 Valve Corporation. All rights reserved. Valve, the Valve logo, Half-Life, the Half-Life logo, Portal, the Portal logo, and the Lambda logo are trademarks and/or registered trademarks of Valve Corporation in the U.S. and/or other countries.
8K/60p出力で、同様にプロジェクター側の情報表示を確認。「4320p 60B」の表示となっている。画面の明るさの違いは天候の変化によるもの
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というわけで、ほぼ完全な8K/60p表示ができていることもわかったので、安心して「DEATH STRANDING DC」をインストール。ここでPCゲームに詳しい人ならお気づきかもしれないが、導入したPCのグラフィックボードはNVIDIAの「RTX3070Ti」だ。このグラフィックボードで8K/60p表示でPCゲームをするのは荷が重い。それを救ってくれたのが、NVIDIAのDLSSという新技術だ。

高効率なレンダリングを行なう技術のようで、負荷の大きいグラフィック性能でも可能な限り高いフレームレートを実現するという。そのおかげで、8K/60p HDR設定でグラフィック設定を「最高」としながらも、「DLSS」を「クオリティ」または「パフォーマンス」とすることで十分快適にプレイできた。フレームレートは40~50fps前後で、素早く視点を動かしても映像がパラパラとすることもないし、十分にスムーズに動く。試しにDLSSをオフとしたグラフィック設定「最高」を試したが、描画が重くてプレイに支障が出るどころか、リアルタイムレイトレーシングがうまく動作せず、グラフィック品質まで明らかに下がってしまった。

「DEATH STRANDING DC」のグラフィック設定画面。解像度は7,680×4,320で、フレームレートは60(fps)としている
「DEATH STRANDING DC」のグラフィック設定画面2。グラフィック品質設定が「カスタム」となっているのは、「DLSS」を使用したため。ほかの設定は品質設定「最高」のまま
「DEATH STRANDING DC」のグラフィック設定画面3。レイトレーシングのための設定もオンとしている
「DEATH STRANDING DC」のグラフィック設定画面4。DLSSは「クオリティ」としている。やや映像がパラつくので「パフォーマンス」の方がプレイは快適だ

8K60p表示で最新ゲームの真の威力を試すとなると、RTX3080TiやRTX3090Tiといった価格的にもハイエンドなグラフィックボードが必要ということもわかったが、RTX3070Tiでも十分以上に美しいグラフィックでプレイすることはできた。8Kテレビも普及が進んでいる4Kテレビに比べればやや高価だし、さらに8K出力ができるパソコン、あるいはグラフィックボードとなるとまだまだ高価ではある。だが、それでもハイエンドのグラフィックボードでなくても、十分に8K/60pのゲームができるというのはありがたい話だ。

グラフィックやサウンドに関する設定もまとめて紹介しておこう。「HDR設定」はOS側でも調整できるが、ゲーム内にも調整項目がある。プレイした感じでは、リアルタイムレイトレーシングによる光の反射などにも影響するので、こちらもきちんと調整しておこう。このほか、映像全体にコントラスト感(正確にはディスプレイ性能に合う最大輝度と最低輝度)の設定となる「輝度設定」がある。サウンド関連も「サウンド設定」で「サウンド定位設定」がある。再生機器がヘッドフォンかスピーカーかを選び、それに合う定位設定となるものだ。

「HDR設定」の画面。この映像がすでに強烈に美しくて驚く。HDRのオン/オフのほか、「HDRの輝度設定」で輝度ピークを調整できる。空の雲を見ながら階調感が一番豊かになるところを選ぶと良い
「輝度設定」の画面。指示通りに図の中にある模様が見えるように調整する。すぐに調整をせず、画面の明るさ/暗さに目が慣れてから調整を行なうようにしよう。絵柄はちょっと怖い
サウンド設定では、「サウンド定位設定」がある。基本的には使用するデバイスがスピーカーかヘッドフォンかを選ぶと考えていい

8K/60p。そのグラフィックに宿る「本物感」

さて、調整なども終わりゲームをプレイしたわけだが、8K/60pでの映像にはかなり驚かされた。

最初に試した4K/120pの段階で圧倒的に美しい映像に惚れ惚れとさせられる。今では標準になりつつある4K解像度でのゲームを試したときとは別格の美しさだ。というのも、パソコンで4K出力ができるようになったおよそ7年ほど前は、レンダリングは4Kでも3Dモデルのポリゴン数が少ないため、斜め線ではジャギーが目立つなど、きれいになったが当時のパソコンやゲーム機の性能的な制約も感じてしまうものだった。

それが現代となると、8K/60p表示ができるだけでなく、3Dモデルのポリゴン数も激増しているし、画面の表示できるオブジェクト数も倍増、テクスチャーの解像度も十分に高いなど、特にPCのグラフィック性能の充実には驚いた。SSDがメインのストレージとなったPS5やWindows 11マシンの起動の速さにも驚いたが。

ただし、自分が今見ている8K映像の凄さが、読者にも伝わるだろうかとも心配になった。当初は4K/120pで十分に美しく、動きの滑らかさもあって、“プレイするならばハイフレームレートの方が良い”と自分でも思い、荷物運びに慣れるまでは4K/120pでプレイしていたほどだ。

そしてある日、プレイに慣れてきたところで8K/60pに切り替えたときの驚きが凄かった。「まるで違う」。まさに本物の大地を俺は歩いている! と感じた。それは緻密なディテールであり、遠くの景色まで見渡したときの奥行きや立体感なのだが、果たしてそれを画像で伝えることができるだろうか。

14.2メガピクセルの手持ちのカメラ(撮影解像度は5K前後)で撮影するなど、いろいろと試したが、残念ながら4K/120pと8K/60pの画像で歴然とした違いは出ていない。参考のために、8K/60p表示で撮影したキャプチャー画像とその切り出し、同じく4K/120p表示の切り出しを掲載したが、その差はごくごくわずかだ。それでも、実際に120インチのスクリーンで見ると8K表示のリアリティに驚く。

マウンテンノットシティで撮影。この画像は8K/60p表示でキャプチャーしたものをそのまま1,920×1,080に解像度変換している
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4K/120p表示でほぼ同じアングルでキャプチャーした画像から、中心部分を1,920×1,080画素だけ切り出したもの。4K表示でも実写とは言えないまでも精巧なフィギュアと変わらないディテールと実在感がある
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中心部分を1920×1080画素だけ切り出したもの。拡大画像のようなぼやけもなく、細部はよりディテールが詰まっているのがわかる
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そもそも、本作は“ただ荷物を運ぶだけのゲームが果たして面白いのか?”と感じ、「DEATH STRANDING」発売時点では敬遠してしまった作品である。プレイしてみると、これが面白いのだから仕方ない。分断された人々を繋ぐというテーマは、人類の滅亡と再生を提示した物語にも深く関わっていてストーリーも感動的。ただ荷物を運び、人と人をつないでいく。それだけでも楽しいのだが、それを繰り返すうちに次第に道ができ、国道の復旧や運搬のための設備が充実していく。世界がどんどん変わっていくのがめちゃくちゃに楽しい。

この理由のひとつがリアリティで、荒れ果てた大地は朽ち果てた都市、草原、ゴロゴロとした岩地、山岳地帯、雪山地帯とバリエーションは豊か。草原地帯ひとつとっても、同じテクスチャーを流用しているとは思えないほど変化に富んでいる。それは、微妙な起伏や勾配、遠くに見える景色の組み合わせで無限のバリエーションが生まれているし、それをリアルタイムレイトレーシングを駆使した光の表現で、天候による見え方の変化までリアルに描き分ける。

未踏の場所へ足を踏み入れた時などは、一見同じような草原なのに、起伏が微妙に大きくなっていてそれまでの感覚で歩いているとバランスを崩して転んでしまう。そのように次第に難易度が上がっていく仕掛けなので、歩き回るだけで楽しいし、未踏の地へ行くときはワクワクしてしまう。ちょっとした丘(ストーリーが進むと切り立った崖や峰だったりもするが)を越えた時の景色がガラリと変わるときの感動は、登山やハイキングの楽しさに目覚めそうな感覚すらある。

そういう感動をダイレクトに伝わってくるのが8K/60pでのプレイの印象だ。ゲームだから、地形の起伏や傾斜はレーダー的なものでサーチして、登れない場所やバランスを崩しそうな場所を調べることはできる。慣れてくるとサーチしなくても起伏や傾斜が読めるようになるし、そこからルートを見つけ出す面白さがある。8K/60p表示だとその険しい山道を注意深く歩く感覚がより生々しく感じられるのだ。

山岳地帯に国道を復旧させると、広大な大地を眺めながらのドライブが楽しめる
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画像では伝わりにくいが、実はものすごい急勾配で足がすくむような怖い場所
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優れたグラフィックとサウンドが相まって、ゲームを超えた臨場感とリアリティ

音響もかなり素晴らしい。運搬中の音は基本的に効果音のみ。乾いた地面を歩けばザクザクと音がするし、ゴロゴロの岩場を歩けばガリガリとした音が出る。時折バランスを崩して転んでしまうとBB(主人公が“装備品”として胸に抱える赤ちゃん)がギャーギャー泣くので、よしよしとなだめる。穏やかな風が吹いて、気持ちよく歩いているとプレイヤーキャラクターのサムが独り言を言ったり口笛を吹く。基本これだけなのだが、サムの声や足音の定位感、右に川が流れていれば川のせせらぎがあり、急流となれば音も変わる。風の音も気持ちよい風音だけでなく、雨が降れば四方どころか自分がずぶ濡れになっているような音の鳴り方をする。

METEOR ONEだと、こうした音が実に生々しく実感のある音として聞こえる。空間感も十分に豊かな広がりがあり、「サウンド定位設定」で「ヘッドフォン用定位」を選ぶと適切なバーチャルサラウンド効果が加味されているようだ。真後ろの音まで明確に定位するわけではなく、自分の真横までの半球状の空間再現だが、臨場感としては十分だ。

SBC接続でも遅延を低減できる「タクティカルモード」も試してみた。徒歩や乗り物で荷物を運ぶくらいなら(TPSに限りなく近い銃撃戦をする状況もある)、オフでもプレイに支障はほとんどないゲームだが、タクティカルモードをオンにすると、転倒したりバランスを崩しやすい大きめの岩を踏んだときのガリッとした音を聞いてからでも、転倒を避ける操作が間に合うようになった。これはかなりプレイがしやすい。

キャラクターがバランスを崩すと歩き動きもよろけるので対処できるのだが、音が低遅延で出るようになると対処がしやすい。(低難易度の設定なら)それほどシビアなアクション性を要求されるゲームではないが、音の遅延が少なくなると随分快適になる。遅延を完全に解消するならば有線ヘッドフォンが良いが、快適に使えるワイヤレスヘッドフォンでゲームをプレイしたい人は、低遅延モードを持つゲーミングヘッドフォンに注目してほしい。

また、ゲームの要所でムービーシーンとなるが、このあたりの再現は映画そのもので、サムと相手との会話も生々しいし、息づかいもリアルだ。室内に響く暗騒音の再現なども実感あふれる再現だ。特に音楽が流れるようなドラマチックな場面となると、その情感の豊かさには感心するし、それが決して過剰にはならないのも良い。だから、運搬中に時折流れる音楽も、まさに旅行先でどこかの家から音楽が鳴っていて、それが風に乗って聞こえてくる風情がある。

SXFI THEATERはさらに空間感が豊かだ。スピーカー用定位設定とするとサラウンド再生用のマルチチャンネル出力となるようで、真後ろまで含めて空間感が再現される。川をじゃぶじゃぶと渡っているときなどは、まさに川の中に足を踏み入れたときの感覚になる。そのため、プレイのしやすさではSXFI THEATERが有利だと感じる。

運搬の障害となるBTと呼ばれる幽霊のようなものが出現すると、BTを撃退するか逃げ切るしかないが、神出鬼没なBTの存在をレーダーだけでなく音でも察知できる。特にBTが現れたときのぞわぞわする感じの音が後ろから聞こえるので、撃退するにしろ逃げるにしろ、判断しやすいのだ。反面、ムービーシーンは比べてしまうとやや声に現れる表情やちょっとした物音もドライな再現にはなりがちだ。

ただし、低音が力強く鳴るので、BTなどとのバトルでの専用の銃器などの射撃音などは迫力がある。そして、時折流れる音楽は比較するとやや情感が足りない感じはあるが、中低音に厚みのある聴き心地の良いバランスだ。

一番感動したのは、雪山の雪の感触だ。新雪が積もった雪の微妙な感触と、キラキラとした光の反射が本当に雪山に居るようで、ゲームのCGはここまリアルな感触が得られるようになったのかと感激したほど。

音響面でも、新雪を踏んだときのサクサクとした感触、膝まで埋まるような深い雪をかき分けて進むときの重い感触もしっかりと出る。吹雪の音もいかにも冷たい感じだ。METEOR ONEだと雪の感触の違いがより分かりやすく、吹雪いたときの冷たさや寒さに耐えるサムの独り言や息づかいが生々しい。

SXFI THEATERでは吹雪いたときの包囲感が孤独な運搬人の辛さをよく伝えるし、足を滑らせて雪山の崖から滑落したときの迫力がとても痛い。情感の描写がうまいMETEOR ONEとややドライだがリアルな感触がよく伝わり、その場にいる感覚も存分に味わえるSXFI THEATERという感じで、どちらも選んでも満足度は高い。

雪山地帯にて。手前の新雪の感触と、遠景の雪山の遠近感がすばらしい
©2019-2020 Sony Interactive Entertainment Inc. DEATH STRANDING is a trademark of Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS. All trademarks are the property of their respective owners. PC version published by 505 Games. 505 Games and the 505 Games logo are registered trademarks of 505 Games S.P.A. Appearance in this game does not imply sponsorship or endorsement. © 2020 Valve Corporation. All rights reserved. Valve, the Valve logo, Half-Life, the Half-Life logo, Portal, the Portal logo, and the Lambda logo are trademarks and/or registered trademarks of Valve Corporation in the U.S. and/or other countries.

最新ゲームの優れたグラフィックとサウンドを最高に楽しめるのもホームシアター魅力

「DEATH STRANDING DC」は、最近のゲームに多い、映画的なゲーム、あるいは「プレイする映画」という表現そのものの作品だが、それだけではなく、体感度や体験といったものまで得られるゲームにまで至っていると感じた。コントローラーのモーションフィードバックも体感的な楽しさを提供するものだが、グラフィックの向上でここまで体感度が高まるというのは、想像もしていなかったし、もの凄い体験だった。

ゲームの主要な登場人物として、ノーマン・リーダスやマッツ・ミケルセン(ゾッとする怖さを伝える一方で、プレイヤーの誕生日にはお祝いしてくれるお茶目さも見せてくれるのがいい)らが出演し、そのモデリングも精密で表情も豊かだ。ここまでリアルで、実写に近づきすぎた不気味さもなく、実写に近いリアルなCGキャラクターとして成立させているのも見事だ。

SXFI THEATERは独自の低遅延ワイヤレス伝送なので、遅延の影響もほとんどない。METEOR ONEのタクティカルモードを試した後だと、やや遅延があると気付く程度。体感的にはタクティカルモード:オフとタクティカルモード:オンの中間あたりの印象だ。

気がつけば理想的と言えるのゲーミングシアターになっていた我が家の視聴室だが、ゲーム好きが高じて至った結果でもあるし、映画でのリアリティを追求した結果でもある。「Dr.ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス」の悪夢のような酩酊感、「トップガン:マーベリック」のパイロット感覚など、最新の映画もまた、臨場感というよりも体感や体験を伝える映像と音響になっているとも思うので、目指した方向性は間違っていなかったとも思う。

ある映画を映画館で見てその後外の街に出たら、街というか世界の見え方が変わった。そんな経験をした人は少なくないと思うが、それは映画館だけのマジックではなく、今や自分の家でも経験できるところまで来た。ホームシアターをやっていて良かった。映画や音楽だけでなく、ゲームでも今までにない経験ができる。最新のホームシアターの魅力が少しでも伝わればいいと思う。

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