
ブラジル相手に決めた2本のフェイクセット
1つめ。第1セットを失って迎えた第2セット。出だしからリードした日本は5-3と点差を2点に広げる。ここでセッター関田誠大がサーブを打ち、切り返したブラジルのスパイクを再び関田が拾う。 そのままボールはレフトの石川へ。第1セットの中盤にも同じようなシーンがあった。その時も関田が1本目をレシーブしてから、2本目を石川が豪快かつ鮮やかに打って決めている。当然、ブラジルのブロックはここでも石川が打つと判断し、レフトに走り、ブロックに跳んだ。 打つには十分可能な高さだった。だが石川は絶妙なタイミングで、逆サイドのライト側で攻撃準備に入っていた西田有志にトスを上げた。打つと見せかけ、セットする――いわゆる『フェイクセット』と言われるプレーが決まり、西田がブロックアウトで得点をもぎ取った。 2つめはもっと鮮やかだった。8-5と日本がリードした状況で、山内晶大がサーブに立った。フローターサーブで崩されたブラジルは、チャンスボールを返さざるを得なかったが、せめて次の攻撃を遅らせようとセッター関田を目掛けてボールを返した。 この状況で、今度はバックセンターから石川が助走をつけ、バックアタックの体勢に入る。「今度こそ打ってくる」とばかりにブラジルのブロックが中央で跳ぶと、石川は華麗なフェイクセットでまたもボールはライト側の西田へ。 1本目よりもさらに豪快なスパイクを決めた西田が雄たけびを上げると、それを演出した石川も拳を握り、吼えた。 打つと見せかけ、空中で体勢とボールをコントロールする。派手なフィニッシュばかりが目立つが、実はフェイクセットは基本のパス力やボールコントロールの技術が備わっていなければできないプレーでもある。もともと石川はパス力があり、高校時代はチーム戦術でツーセッターに取り組んでいたこともあるほど、パスの質や精度の基本能力が高い。 加えて、石川がプレーするイタリアでは、かつてモデナのチームメイトであったイアルバン・ヌガペト(フランス代表)らがこのプレーを得意としており、多くの選手が当たり前にフェイクセットをこなしている。 Vリーグでもパナソニックのミハウ・クビアク(ポーランド代表・主将)がこのプレーを得意とし、その技術は世界随一とも言われている。石川は彼らの試合やプレー映像を見て、練習を繰り返し、自分の技にするべく磨いてきた。 上手な人を見て、真似る。石川はバレーボールを始めた頃からその能力に長けていた。
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