2020年12月27日に行われた、RTA in Japan 2020の「ファミコン版ドラゴンクエスト3 何でもありRTA」部門で、走者の一人“ひっしー”さん(@Hitsheegame)が見事22分07秒でゲームクリアに到達し、世界記録を更新しました。2020年に入って新たに発見された「電源ON/OFFバグ」を活用したもので、バグ結果をコントロールするための“ファミコン本体をホットプレートで暖める”という謎の儀式で開催前から注目を集めていた種目でした。
今回使用された「電源ON/OFFバグ」とは、ゲーム開始後、王様に話しかけてセーブした後、すぐに電源をON/OFFすることで意図的にゲームデータを崩壊させられるというもの。詳しい手順は省略しますが、成功すれば最初からキャラクターのレベルが最大になったり、ゾーマ城への鍵となる「にじのしずく」を持った状態から始めたりすることができ、ゲーム開始直後からいきなりラストダンジョン直行といった大幅なシーケンスブレイクが可能になります。
問題は「なぜそれでホットプレートが必要になるのか?」という点ですが、どうやらこのバグによって生成されるデータには「ファミコン本体による個体差」があることと、さらに「バグ発生時の温度が密接に関係しているらしい」ということがこれまでに判明しているため(温度によってメモリの揮発速度が変わるためと推測されていますが……すいません僕もよく分かりません。詳しくはピロ彦さんの解説エントリをどうぞ)。このため走者たちはまず「理想的なデータを引ける本体ガチャ」を乗り越え、さらに「理想的なデータを生成するための温度管理方法」をそれぞれ準備したうえで今回のRTAに臨んでいました。
ちなみに、たまたま世界記録を達成したひっしーさんがホットプレートを使っていたというだけで、中にはネックウォーマーなどを使っていた人も。別にホットプレートが必須というわけではない……というか、そもそも本来の使い方ではないためくれぐれもご注意ください(あと温度管理に使っていただけで、別にファミコンを焼いていたわけではない)。
今回のRTA in Japan 2020では、ばくぜろさん、ひっしーさん、ピロ彦さん、limeさんの4人がこの「何でもあり」ルールで、ファミコン版「ドラクエ3」のクリアに挑戦。
上記の通りかなり運に左右されるルールですが、ひっしーさんはさらに特殊な方法を用いて、後期ROMでしか使えない「ノーエンカバグ(2コンのABを押しっぱなしにしていると敵が出現しなくなる)」を併用。最初こそバグの仕込みでやや出遅れましたが、その後は敵が出現しなくなったゾーマ城をスイスイ歩きながら一気にトップに迫っていきます。その一方で、序盤トップだったばくぜろさんは最初こそスムーズでしたが、中ボス戦で必要になる「メガンテ」を覚えていないことが途中で発覚。最終的にはひっしーさんがばくぜろさんを追い抜き、開始から14分30秒ほどで見事ゾーマ撃破に成功しました(タイマーストップはエンディング後なのでもう少し後)。
【追記】※当初ひっしーさんの追い上げについて「エンカウントに恵まれた」と説明していましたが、ノーエンカバグ使用によるもの(もちろんレギュレーションの範囲内)だったため説明を修正いたしました
最大の更新ポイントとなった「電源ON/OFFバグ」が公のRTAイベントで使われたのは恐らく初で、「温度管理」という謎の儀式はもちろん、バグの副作用による画面崩壊、わずか4分半でのゾーマ城突入などなど、これまでのRTAでは見られなかったカオスな光景の数々に、コメント欄では終始困惑やツッコミの声があふれる形に。世界記録達成が確認されると、解説からも「これがホットプレートの力です」という謎発言が飛び出し、一時はTwitterのトレンドに「ホットプレート」が入ったりもしました。
ちなみに優勝したひっしーさんはその後、使用したホットプレートで配信中にそのまま肉を焼き始め、さらなる視聴者の困惑を誘うという一幕も。これがロトのホットプレートか……。
RTA in Japan 2020は12月27日から12月31日まで開催中で、この後も「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」の30分クリアや、いろんな意味で今年話題になった「ファイナルソード」のバグあり1時間クリアなどが予定されています(開催スケジュールはこちら)。
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