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Wednesday, July 8, 2020

ハルカミライが手にした本当の強さ。ひたむきさを抱き締める歌 - CINRA.NET(シンラドットネット)

ハルカミライのライブは、涙も拳も大合唱も一気呵成に雪崩れ込んできて、そりゃもうぐっちゃぐちゃである。好き放題にステージを飛び回り、スーパーヒーローよろしく幾度も拳を突き上げては、美しいメロディを大気圏までぶっ飛ばしていく。たとえば昨年12月に幕張メッセで行われた単独公演なんてまさに彼らの真骨頂で、逃げ場一切なしのセンターステージに仁王立ち(あるいはピットに飛び込んで)、真っ向から8,888人の声を喰らいながら、その何倍も大きな歌を放ち続けた。汗まみれで、笑いまみれで、清々しい。ひっどい顔になってもひたすら自分を解放してシンガロングし続け、全員が心を素っ裸にして、正体と真実だけでぶつかり合える歌。それがハルカミライの最高さなのだ。

そんな彼らがただ無軌道なだけで終わらない最大の理由は、何よりもその美しい歌声とメロディによるところが大きいだろう。ゴタゴタ言う前に俺はここだと示すパンクのデッカい歌と、寂しさを滲ませながら「俺を見つけてほしい」と願う切実なメロディ。橋本学の歌の中には、その両方が同時に収まっている。強さと切なさの両翼が、彼の歌とメロディをどこまでも羽ばたかせているんだろう。その歌に乗せて、涙も汗も全部がドーンと打ち上がっていく様に心震えてしょうがないし、どんなに湿っていて仄暗い感情も、どんな過去も、全部持って前へ進もうとする力がガンガン湧いてくるのである。バカみたいな言い方だが、大声で歌うと、ああ生きているって思える。

そしてそのメロディを、より一層人を選ばない楽曲へ昇華させたのが2ndフルアルバム『THE BAND STAR』だ。俺を見ろ! と叫ばれてきた歌は、俺自身が心を開こうとする歌へ。切なさや寂しさを滲ませてきた歌は、人への優しさと寛容さを響かせるものへーー歌に込められる異様な熱量は変わらないまま、しかし歌が大事に包んでいるものが「俺」から「俺と人」へと変貌しているのだ。しなやかさを増したサウンドも幅を広げたメロディもより一層一直線に心へ飛んでゆく、寄り道なしの生き様花火である。その核心を橋本学と徹底的に語り合ったのが下記のインタビュー……なのだが、まずはとにかくこの新作を、どんな今も歯を食いしばって生きていくための存在証明を、聴いてください。それから、大声で歌うように読んでください。

今までは自分の未来、自分の過去――「自分!」っていう部分しか歌ってなかった。ただ、その「自分」っていう縦線だけを強く見せる気持ちが、自分がハマってた型だと思うんです。

ハルカミライ『THE BAND STAR』を聴く(Apple Musicはこちら

―痛快なパンクロックが軸になっているのは変わらずなんですが、だけど曲の端々に変化が多く見られる作品だと感じていて。メロディがポップになり、歌われていることを見ても、歌のガソリンが大きく変化している作品だなと思ったんですけど、学くん自身はどんな手応えを持っているアルバムですか。

橋本:確かに歌のメンタリティが変わって、書ける歌が変わってきた感じがしますね。それによって音楽的にも歌的にもバラエティが広がったアルバムだと思うし、今言ってもらったことと、ほぼ一緒の感覚を俺も持ってますね。

ハルカミライ<br>橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)、須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)によって、2012年に東京・八王子で結成されたロックバンド。2017年2月にTHE NINTH APOLLOから初の全国流通盤『センスオブワンダー』を発売し、2019年1月にはEMI Recordsから1stフルアルバム『永遠の花』をリリース。2019年12月8日には幕張メッセで360°センターステージでの単独公演を開催し、8,888人を動員してソールドアウト。2020年7月8日に2ndフルアルバム『THE BAND STAR』を発表する。
ハルカミライ(はるかみらい)
橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)、須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)によって、2012年に東京・八王子で結成されたロックバンド。2017年2月にTHE NINTH APOLLOから初の全国流通盤『センスオブワンダー』を発売し、2019年1月にはEMI Recordsから1stフルアルバム『永遠の花』をリリース。2019年12月8日には幕張メッセで360°センターステージでの単独公演を開催し、8,888人を動員してソールドアウト。2020年7月8日に2ndフルアルバム『THE BAND STAR』を発表する。

―たとえば“100億年先のずっと先まで”の冒頭とラストに、バンドが一体となって音の壁を立ち上げていくところがあって。それが学くんのメロディをグオオオッと昇らせていく。他の曲も含めて、これまでとは違うアプローチでメロディをドラマ化させる曲が多いですよね。

橋本:そうですね、今までにないことを多くやってると思います。メロディで言っても、上と下をこれまでより広げたんですよ。アレンジやコード感も、メロディと同時に変化してきたと思うし。今までやったことのない要素を全部詰め込んだアルバムだと思います。

―まず、その変化の根底にあったメンタリティの変化とはどんなものだったのか、教えてもらえますか。

橋本:端的に言うと、自分自身から開いていくようになったと思いますね。今までは閉じこもって書いていた歌詞を、外で書くことに挑戦してみたんですよ。喫茶店に行ってみたりとか(笑)。

―ああ、物理的な外っていうこと(笑)。解釈してみると、人がいる場所で歌を作っていったという感覚でもありますか。

橋本:それもあると思いますね。なぜ外に出たかって言うと、『永遠の花』の次をどうしようかって考えた時に、だんだん自分が固定概念や型にハマってきてる気がしたんです。今のままじゃすぐに限界がきてしまう気がして。だから外に出るしかなかったんですよね。

―そんなに限界を感じてたの?

橋本:感じてたっすね。正直に言えば、作る曲にも飽きがきてたんですよ。もちろんパンクも大好きだけど、ただ青春パンクって言われる音楽だけをやっているのも違うんだよな、もっといけるよなっていう感覚があって。そこで鍵になったのが、EMI Records(ハルカミライの所属レーベル)の渡辺さんに「ネガティブな言葉だとしても、みんなでシンガロングしていいじゃん」って言われたことだったんですよ。それで、今までとは違う作り方をしてもいいと思えたんですよね。

ハルカミライ『永遠の花』を聴く(Apple Musicはこちら

―明るさや強さ、豪快な存在証明を打ち上げるシンガロングがハルカミライの音楽的な特徴のひとつになってきましたけど、渡辺さんの言葉によって、歌える感情の幅が増えたっていうこと?

橋本:うん、そういうことだと思いますね。今までは自分の未来、自分の過去――「自分!」っていう部分しか歌ってなかったんですよ。ただ、その「自分」っていう縦線だけを強く見せる気持ちが、自分のハマってた型だと思うんです。でも、自分が見せたいと思う感情以外も歌にしていいんだなと思えて。自分っていう縦軸から逸れることができるようになりましたね。

なんでも受け入れるだけの優しさは信用できなかったんです。だから、単に優しいヤツになりたくなくて、今までいろんなものを意図的に突っぱねてた気がするんですよ。

―自分っていう縦軸から逸れた時に、何と出会えたと思います?

橋本:今さら何をって言われるかもしれないですけど、人を見て感動できるようになりました(笑)。具体的に言えば、“夏のまほろ”なんかは高校球児を見て刺激を受けて書いた曲なんですよ。そういうふうに、自分の外で起こっていることから歌が生まれてくるようになりましたね。

―以前は人を見て感動することがなかったの?(笑)

橋本:これは人を見下すのとは違うんですけど、人を見ても「はいはい」くらいにしか思わなかったです(笑)。だけど人の強さ、優しさやひたむきさに感動できるようになって。それに、人を認識することで感謝みたいな気持ちが自分の中に生まれてきたんですよね。もちろん音楽は自分が好きでやってるんだけど、好きにやっていることだからこそ、信じてくれる人への感謝を実感したというか。それはお客さんに対してだけじゃなくて、事務所の社長とかスタッフに対してもそうで。それは自分が身につけたものとしてデカかったです。

ハルカミライ

―これは毎回言ってるかもしれないんですけど、学くんは、自分の弱さとか寂しさを自覚するからこそ、何よりも強くありたいというテーマを歌にして、自分に課すところも強かったと思うんです。人への感謝を実感したり人に感動できたりしたことは、自分の何かを赦せることにも繋がりましたか。

橋本:うーん……どうだろう。これもまた感覚的な話かもしれないんですけど、『はじめてのおつかい』を見て衝撃だったんですよ! 子供の姿を見るだけで涙をボロボロ流すようになっちゃって!

―ははははは。高校球児に刺激を受けたという話もそうですけど、人の無垢なひたむきさみたいな部分は、ハルカミライの歌が先天的に持ってたものだとも思うんですよ。その熱さやひたむきさに対して、何より自分自身が優しくなれたっていう話なんですかね。

橋本:……俺、何かを簡単に受け入れたり認めたりすることは、そんなによくないことだと思ってたんですよ。なんでも受け入れてるだけの優しさって信用できないから。だから、単に優しすぎるヤツになりたくなくて、今までいろんなものを意図的に突っぱねてた気がするんですよね。本当の優しさってなんだ、本当に信用できるものってなんだ……そうやって疑うことで、芯のあるものを見極めようとしてきた気がする。やっぱり信用できるのは、ある種の怖さがあった上で優しい人だと思うので。

『センスオブワンダー』(2017年)収録

『星屑の歌』(2017年)収録

―筋が通ってる人こそ一見怖く見えますからね。確固たるものがあるから人に対して愛ある厳しさを持てるっていう言い方もできるかもしれない。

橋本:芯のある人って、人を排除することはないけど決して揺らがないから。で、まさに自分を確立できている人だからこそ、厳しくても愛のある言葉を人に言えたりとかするじゃないですか。そういう人が好きなんです。優しい歌を歌いたいけど、ただ単に優しいだけの人間にはなりたくない、芯のある優しさを見極めたいって思い続けてきたんですよね。

橋本学
橋本学

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