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Wednesday, May 13, 2020

加藤CDC前研究員「本当のことが伝わっていない、総理でなく専門家が説明責任を」(ニュースソクラ) - Yahoo! - Yahoo!ニュース

【編集長インタビュー】『人類と感染症の歴史』の著者・加藤茂孝前CDC客員研究員に聞く(上)

 新型コロナウイルスの世界的な大流行で、生活や経済活動は激変している。国立感染症研究所のOBで米CDC(疾病予防管理センター)勤務の経験もあり、『人類と感染症の歴史』(丸善出版)、『続・人類と感染症の歴史』(同)の著書もある加藤茂孝氏に、新型コロナで混乱する当局と医療現場、さらに歴史的な意味を聞いた。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)

ーーいま続いている外出自粛は効果的でしょうか。
 人と人の接触を絶つことが感染症の拡大防止に効果的であることは14世紀のペスト大流行、あるいはそれ以前からわかっていました。古典的だがいまでも通じる手法です。SARS、MERSも基本的に人と人との接触を止めることで拡大を止めました。

 今の日本で気になるのは、世の中の人が納得する十分な説明がなされていないことです。外出自粛は重症者が増えすぎて医療崩壊が起こるのを食い止めるためにやっているのですが、最初からそこをうまく説明できていなかったように思えます。

 抗体を持ったひとが社会の一定の割合、今回のコロナウイルスの場合は6割か7割の人が感染して抗体を持つようにならないと感染拡大は終わらないと考えられています。これが集団免疫の考え方です。もちろん、ワクチンができたり、治療薬ができるなど治療法が確立されれば、接触機会削減など必要なくなります。

 しかし、ワクチンと治療薬はまだできていないのだから、感染させて抗体を持つ人が増えていかないと感染症の終息は止めようがないのです。感染が爆発的にならないようゆっくりと進むようコントロールする必要があるのです。

 なぜ、ゆっくり感染が進むようにする必要があるのか。爆発的に感染者が増えると、爆発的に重症者(人工呼吸器など高度な医療が必要な患者)が増えて、病院に収容しきれず、高度な医療器具も足りなくなって、治療をできなくなってしまいます。このように適切な治療をうけられない人が出てくるのが医療崩壊です。医療が行き届かずに亡くなる人がでてきてしまいます。

 新型コロナ感染者に病床などの医療資源を取られて、やはり適切な医療を受けられない新型コロナ以外の患者さんがでてくるのが、医療崩壊の特徴です。たぶん、それは同時に起こるのでしょう。

 だから、重症者を受け入れる専門病棟を増やすことが急務なのです。そこに働く人のための防護服、医療用マスク、ゴーグル、フェースシールドなども十分に準備し、医療従事者が安心して働けるようにする必要もあります。もちろん人工呼吸器や血液に直接酸素を封入して肺を休ませるECMO(体外式膜型人工肺)のような専門的な治療器も充実させる必要があります。保育園が軒並み休んでいますから、医療従事者の子供を預かる
体制も必要でしょう。

 ところが医療機関の受け入れ体制の整備は遅れに遅れてしまった。そこに全力投球すべきだったのに、首相官邸も厚労省もそこがやれていない。少なくとも、それが大切だとわかっていたら、466億円もかけて布製マスクを全戸に配ろうという発想は生まれなかったでしょう。

 医療体制の充実が進めば、外出自粛など甚大な影響のでる対策はもう少し緩くても済むのかもしれないのです。

ーーほかにも説明不足な点はありませんか。

 これは持久戦になる可能性が高いことがうまく伝わっていません。社会の6割ぐらいの人が感染するまで終わらないといいましたが、とすると日本では6000万人が感染するまで続くということなのです。いま感染者数は判明しているだけだと1万人です。発症していないがもう抗体があるひとなどこの何倍かは感染しているでしょうが、6000万人が感染するというのは、やはり長期戦だといわざるをえないでしょう。

 2.3週間がまんすれば、こういう不便な状態は終わると思ってしまっている方々もまだまだ多いのではないでしょうか。むしろいまの緊急事態宣言の期限である連休明け後も、どの程度の自粛を求められるかは別にして、無期延長になるぐらいのつもりでいないとなりません。

 接触削減7割、8割という数字もさかんに言われますが、わかりにくい。どこでどんな状態になったら8割達成といえるのか、基準や状況をできるかぎり明確、具体的に言わないと、不安をあおるだけで適切な行動を促すことはできません。

 とにかく、有効な情報をきちんと伝えられていないと思います。アナウンスメントは、素人の総理大臣ではなく、感染症の専門家が担うべきだったのです。今回の新型コロナへの対応ではうまく機能していないようにみえるCDC(米疾病予防管理センター)ですが、2003年のSARSの際のCDCは見事でした。

 ちょうど私が客員研究員としてCDCに赴任していたときのことでしたが、CDCトップのジュリー・ルイス・ガバディン女史の会見はいつも秀逸でした。米国での感染が広がる前に、いちはやく、中国からウイルスを手に入れ、遺伝子配列を決定し、「すべてのデータは持っている。安心してください」と言い切った。そのほかの、情報開示も要にして簡だったと思います。

 だから私は帰国後、日本版CDCを設立しろと訴え続けていたのです。この新型コロナの感染で、日本版CDCを唱える人が有力者の間でも増えているのはうれしいことです。新型感染症は4、5年に一度ぐらいの頻度では流行するのでしょうから。

ーー長期戦となると必要なことは。

 もちろん、医療機関の感染症対応力の充実、CDCの機能を果たせるような政府内の体制整備など、応急処置でない体制づくりが必要です。同時に、人々の生活スタイル、働き方もそれに合わせていく必要があります。

 長期戦なら休校を続けるのは教育の機会を奪っているのだから弊害が大きい。オンライン教育などもいいと思いますが、私は青空教室もやってみたらどうかと思う。雨でない日は校庭で授業するんです。そんなアナログなことも含め、長期戦への工夫はしたい。引きこもることによるメンタルへの影響も考えて、そのケアの方法も考える必要があるでしょう。

ーー22日に政府は帰省せずオンライン会話で済ませる「オンライン帰省」を求めるなど10項目の要請を出しましたが。

 現在の外出自粛である程度の効果を出しているので、より強化して確実にしたいということなのでしょう。

■加藤茂孝(かとうしげたか)1942年生まれ、三重県出身。東京大学理学部卒業、理学博士。国立感染症研究所室長、米国疾病対策センター(CDC)客員研究員、理化学研究所チームリーダーを歴任し、現在は株式会社保健科学研究所学術顧問。
 専門はウイルス学、特に風疹ウイルス、麻疹・風疹ワクチンである。妊娠中の胎児の風疹感染を風疹ウイルス遺伝子で検査する方法を開発。著書に『人類と感染症の歴史―未知なる恐怖を超えて』(丸善出版、2013年)、『続・人類と感染症の歴史―新たな恐怖に備える』(丸善出版、2018年)がある。

■土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設

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