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Friday, April 3, 2020

本当の危機は7月からだ 米国失業ショックの後に始まる株式市場の「新常態」 - ダイヤモンド・オンライン

世界経済ロックダウン#2
Photo:SOPA Images/gettyimages

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大量失業が発生している米国。世界最大の経済大国でこのまま景気後退が進めば、日本もそこに必ず巻き込まれていく。緊急連載『世界経済ロックダウン』の#2では国際金融アナリストの豊島逸夫氏に、米国の新型コロナ危機が米国外にどう波及していくかを聞いた。

死者10万人、失業率3割という
「ベストシナリオ」

 新型コロナウイルスの恐ろしさの本質は、「どれだけ感染が拡大するのか」「どれだけの人が犠牲になるのか」「いつ終息するのか」といった基本的な問いに、世界中の誰一人として確かな予測を示すことができない点にある。この極端に視界不良な状況は市場が最も嫌うところだ。それ故今年2月以降の前代未聞の株価乱高下の最大要因となっている。

 一寸先は闇の状況で、当面市場は何をよすがとしているのか。すばり、米国の感染者数、死者数だ。その最たる例が、トランプ米大統領が3月31日の記者会見で言及した米国での死者数予測。「新型コロナによる国内死者数は最低でも10万人に上る」。日本時間午前7時台のことであったが、この10万人という数字が瞬時に世界中の市場を駆け巡った。

 このデータの出所は米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長(79歳)である。過去6代の米大統領にエイズやエボラ出血熱など感染症の対策を助言してきた権威で、新型コロナではホワイトハウスのタスクフォースの主要メンバーを務めている。トランプ氏の記者会見にも同席して遠慮せずに本音を語るので、今や「ファウチドーナツ」などが発売されるほど。一躍、時の人になった。その彼が、あらゆる感染拡大対策を講じた上での「ベストシナリオ」でも10万人が死ぬ、と指摘したのだ。

 メディアでは失業保険、失業率など雇用関連経済統計がよく用いられる。米セントルイス連邦準備銀行は、米国の失業率が4~6月期に32.1%に達すると予測している。これは最も厳しい条件を前提とした「ワーストシナリオ」だ。米ゴールドマン・サックスの予測は15%とやや控えめ(と言ってもリーマンショックを上回るが)ながら、国内総生産(GDP)成長率はこの期間に34%減少するという。

 しかし、新規失業保険申請数が600万件という途方もない数字が発表されても、当日のダウ平均は急騰した。プロの視点では「このような雇用不安に備えた2兆ドル規模の財政出動ではないか」なのだ。

 人命を救うベストシナリオは、経済を著しく停滞させるワーストシナリオでもある。ニューヨークをはじめ全米各地で死者数増加ペースを鈍化させるためにロックダウン(都市封鎖)などの対策が、疫学的に意味のある期間、厳格に行われても、10万人の死者が出て、3人に1人が失業し、GDPが34%落ち込むのである。一時的にせよ1930年代の大恐慌レベルのショックを覚悟せねばならぬ。

 しかも中国の現状が示す通り、ショックが去っても、個人消費は戻らない。ここにも「消費の新常態」を見る。こういった劇的な悪化を、米国や日本、世界のマーケットは織り込んでいくことになる。

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