現在、日本人男性の3人に2人、女性でも2人に1人が、生涯でなんらかのがんに 罹 っています。日本は有数のがん大国となりましたが、その理由を考えてみたいと思います。
がんは「遺伝子の老化」
私たちの細胞の設計図であるDNAには、遺伝情報が暗号のように保存されています。暗号として使われている 文字は4種類の塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)の対からできており、A-TまたはG-Cの塩基対が存在します。ヒトでは、この塩基対の数は約30億個であることが分かっています。そのうち、実際にたんぱく質合成のもとになる遺伝子の数については、科学者間での合意はできていませんが、2万1000個程度と予測されています。
そして、この遺伝子はただ生きているだけで傷ついていきます。ものは必ず経年劣化を起こしますから、当然です。とくに、特定の遺伝子に傷(突然変異)ができると、細胞は止めどもなく分裂を繰り返すことになります。こうした遺伝子には、細胞の分裂を止める働きをする「がん抑制遺伝子」や、細胞の分裂を進める「がん遺伝子」があります。
突然変異によって、がん抑制遺伝子が働かなくなったり、がん遺伝子が異常に働き続けたりすると、細胞は死ぬことができなくなり、異常な増殖が続くことになります。
そして残念ながら、年齢とともに、がん抑制遺伝子やがん遺伝子に突然変異が積み重なっていき、がん細胞が発生しやすくなります。一言で言えば、がんは「遺伝子の老化」と言ってよい病気です。
遺伝子の病気だが、多くは後天的に生じる
なお、がんは遺伝子の病気ですが、遺伝する病気とは言えません。確かに、生殖細胞の遺伝子の異常が代々受け継がれて、特定のがんを発症しやすい家系も存在します。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさん(44)もその一人で、血液をとって、遺伝子検査を行った結果、BRCA1という遺伝子の異常が発見されたため、両方の乳腺組織と卵巣を「予防的」に切除しています。
すべての遺伝子は父母から一つずつ受け取りますが、ジョリーさんの場合、母親から受け継いだBRCA1遺伝子に異常があったようです。彼女の身体のすべての細胞は、異常なBRCA1遺伝子を持った卵子と正常な精子が合体した受精卵から作られましたから、血液細胞を採るだけで、この遺伝子の異常が分かったのです。
しかし、こうした「家族性腫瘍」はあくまでがん全体の5%に過ぎません。ほとんどの場合、「遺伝子のキズ」は、私たちの身体の細胞(体細胞)に後天的に生じるものです。健康な人の体でも、毎日、多数のがん細胞が発生していることが分かっていますが、免疫細胞が水際でこれを殺してくれています。
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February 24, 2020 at 12:20PM
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日本が「がん大国」になった本当の理由 - 読売新聞
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