「吉村効果」はあったのか?
2021年10月31日に投開票された衆院選の特徴は、日本維新の会(「維新」)が大きく議席を伸ばしたことだった。公示前の維新の議席数は11だったが、大阪を中心とする16の小選挙区で勝利したことにくわえて、比例でも維新は25議席を獲得した。もちろん、2012年の衆院選で獲得した議席数が54であったことなどから、躍進とはいえないと見る向きもある。しかし、自民党が議席数を維持することに概(おおむ)ね成功した中で、維新が議席数を伸ばした点は軽視されるべきではない。少なくとも現在、維新に「追い風」が吹いていることは間違いない。
維新の躍進をもたらした最大の要因は、関西圏での圧倒的な支持である。それは、比例で獲得した議席の半数近くが近畿ブロックでの獲得議席であることや、19ある大阪府の選挙区のうち、15の小選挙区で維新が勝利したことからも明白である。残る4つの小選挙区には候補者を擁立していないので、実質、大阪の小選挙区では全勝したことになる。
「在阪メディア」影響説
なぜ維新は関西圏、とりわけ大阪でこれほどまでに強い存在なのだろうか。その要因としてしばしば言及されるのは、維新の副代表であり、大阪府知事である吉村洋文への支持、あるいは人気の高まりである。コロナ禍を機に吉村のメディア露出の頻度は大幅に増えた。とりわけ在阪テレビジョン放送局(「在阪メディア」)への露出頻度が増加した。それによって関西圏を中心に維新支持者が増加し、大勝するに至ったということである。
その傍証として引き合いに出されるのは、在阪メディア圏域内(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県、徳島県の一部)における維新比例得票率の高さである。たしかに維新比例得票率の分布を確認すると、在阪メディアがカバーする地域では総じて高い水準にある。一方で、その範囲外になると、とたんに維新比例得票率は低くなる。これらの事実などに基づき、吉村あるいはメディアの影響論が主張されるわけである。
しかし、事はそう単純ではない。たとえば兵庫県と岡山県の維新比例得票率の差について考えよう。なるほど、両者には在阪メディア範囲内と範囲外という点で違いがある。しかし違いはこれだけなのか。換言すれば、メディア以外の維新の得票率に影響を与える要因の効果は統制されているのか。よく考えると、維新が擁立した候補者の数、知事の党派性、大阪都市圏に含まれているか否かなど、メディア以外の要因も異なることに気づかされる。
そしてこれらの相違もまた、維新の比例得票率に影響を与える。両者における維新比例得票率の差は、在阪メディアか、維新の候補者による票の掘り起こしか、それとも別の要因か。維新比例得票率の分布をどれだけ眺めても、この疑問にこたえることはできない。
さらにいえば維新比例得票率には、大阪府域でもっとも高く、大阪府から離れるにしたがって徐々に低下していく特徴もある。在阪メディア圏域の内外だけではなく、圏域内においても、維新比例得票率には大きなばらつきが存在する。大阪府内と府外の維新比例得票率が異なるところからも、それは明らかだろう。
大阪の中心部から離れるにしたがって維新比例得票率が低下するのであれば、在阪メディア圏内外で生じる得票差についても、自動的に生じる変動か、それともメディアの影響かを見極める必要性が生じる。
「自民➡維新」支持率の逆転現象
むしろ、これまで蓄積されてきた調査結果は、メディア以外の要因によって維新が関西圏で大勝した可能性が高いことを明らかにしている。ABCテレビとJX通信社が2020年9月中旬から10月末にかけて、大阪市民を対象に行った計7回の意識調査の結果を見ると、自民党支持率の平均値は26.8%、維新支持率の平均値は21.7%である。2020年9~10月時点では、維新支持率よりも自民党支持率の方が、維新のお膝元である大阪市でさえ高かったのだ。
しかし、NNN系列30局が投開票日当日に、大阪府第1区から5区(6区は守口市と門真市を含むので対象外から外した)で行った出口調査の政党支持率を見ると、維新支持率の平均値は37.0%、自民党支持率の平均値は23.8%であった。一方は世論調査、他方は出口調査なので単純比較はできないが、2021年10月時点で、維新支持率と自民党支持率の逆転現象が起きていたことを示唆する結果である。
この逆転現象を吉村人気で説明することはできるだろうか。言い換えれば、吉村人気→逆転現象という因果関係があるといえるだろうか。吉村は、2020年4月時点で既に多くの大阪市民に支持される人物だった事実を踏まえれば、そのように主張することは困難だ。「原因(=吉村人気)」が一定なのに、「結果(=維新支持率)」は変わっているからだ。

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